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  • ブログ・花房 陵

    物流営業の基本

    2008年5月15日

     
     
     

    ●物流サービスの販売
    物流会社の営業マン研修で話題に上がるのが、総合物流サービスとSCMのソリューションサービス。採用される提案書の作り方から、プレゼンテーションの技法と演技。モノとコトでは売り込み方が違うはずなのに、期待される方の勘違いがあるようです。
    物流サービスはコトの販売でも特にややこしい生産財で、売り込み先の担当者を口説き落とすのとはわけが違います。
    ●モノとコトの違い
    PHP文庫で絶版になった「販売の科学」唐津一著(類書「ものを売るにはコツがいる」)には、販売は少しづつ調べて売り、売って調べる科学があると説明しています。だからといって、市場調査に頼るのは無しですといいます。
    需要があったとしても売り手はすでにいるはずで、市場が拡大しても自社の供給に限界があるから、売るのは自社の成長が精一杯でしょう、とあります。
    モノを売るにはそれなりの失敗と経験が知識として積み上がりますが、日本ではコトを売ることに慣れていません。大成功した経験がありません。
    コトは売り始めるまでと売った瞬間とリピートには、それぞれ大きなハードルがありすぎるようです。売った瞬間、「やったー!」と「シマッタ!!」は表裏の関係にありますよね。運送の仕事なんて特にそうです。受注して配送を無事に終えられればホッとできますが、約束通りに集荷に行っても思いの外待たされたり、伝票が不備だったり、納品に場所が分からなくてウロウロしたり叱られたりで、「こんなはずじゃなかったぁ」というのがあんまり多いので、求車求貨のシステム販売は不調で、最大手のロジリンクも店じまいしてしまいました。 
    ◎コトを売るには
    1 サービス全体像の説明
    2 手順やプロセスというしくみの説得
    3 実績や評価という過去の成績書をさらに説明
     ようやく、「分かった、買うよ」と言われてから
    4 お客側期待の内容を理解して
    5 自社での処理手順や仕様を確認して
    6 採算や収支を改めて検算して
    7 やってみて、期待と予測と予定があてはまったかどうか
    8 リピートをお願いすべきか、お断りすべきか非常に悩んで
    9 しばし、時間が過ぎていく
     こんなステップになるのでしょうか。
    しかも、やっかいなのは説得できても、お客様側の稟議だ審査だ、決裁だ、精算条件が決まらなくて、終わっても「料金をいただけるかなぁ」という不安がずっと続きます。
     生産財の販売と同じように、アフターサービスや提供結果の評価報告までも求められたりして、息の長い、実に苦労の多いことに唖然とすることがある。
    小売りの対面販売や卸の掛け売りとは、まったく次元や深さ、ややこしさが異なることが、コトの販売は事前に想像がつきにくいモノです。
    ●買って喜び、売って喜ぶ
    松下翁はこれを言いました、互いに歓喜が無ければ商ではないと。物流サービスの販売では、売った瞬間にややこしさで苦労するけれども、売る前にはさらに輪を掛けた悩ましさがあります。
    まず、生産財だということ。商談を始めてまとまるまでに、「前任者の決定」を覆すための情実がいるし、料金競争で始めたとしても仕様や中身、付帯サービスつまりは無料奉仕の範囲が広がるものです。
    アフターや保証が必要で、失敗したら賠償まで覚悟しなくてはならないから、何よりリピートがあることを前提にした収支を見なくてはならない。
    リピートがない、なんてことの無いように細心の詰めとリスク、予想外の出来事を読みとる能力も必要だから、念には念を重ねた思推がぐるぐる回る。
    あんまり考えても始まらないや と、素速い決断をした案件に限って不測の事態が起きるもので、運を羨むなんてことも先輩には多かったような。
    共に喜びが生まれる大成功は、案外と少ないように聞いています。
    ●売るのは自己都合から考えないと
    物流子会社が外販を進めるのは義務だから仕方ないとしても、倉庫や運送の営業には、やたらな営業は禁物という不文律がありました。それは、失敗が思いの外に多かったからでしょう。売って喜べない経験が日常茶飯事だということ
    販売活動は、顧客の問題解決であってソリューションだ。顧客満足こそ、販売の原点に持つべきコンセプトだ、というのはウソです。
    消費財でモノなら、顧客に合わせて商品を開発して売り込むのが常道です。
    サービスもそうですし、なるべく多くの顧客市場をカバーするように自社の規模を拡大しながら、さらにシェアを高めるような競争戦略が必要になります。
    生産財、つまり顧客がそれを利用してさらに販売活動をつなげるようにするには、新規に開発する必要もありますが、既存のモノやコトを当てはめていくプロダクトアウトが開発経費や運営コストを吸収する第一の手段でしょう。
    物流企業が販売、つまり営業活動を行うには既存サービスの開発受託、共同化次に新規設備投資を伴う事業化でしょう。
    運輸であれば、積載、稼働率、実車率を上げるのが最初で、倉庫なら保管率や回転を上げるのが当初の企画になります。つまりは、自社の効率追求、自社都合の埋め合わせが必要でしょう。
    それなくして、顧客満足は自社不満につながります。ひいては、顧客も自社も効率化が進まず、最適原価、最少価格が図れなくなります。
    ●格好の良いセールスは互いに苦労する
    買って喜び、売って喜ぶ構造が物流サービスに成り立つとすれば、それは販売側の経営資源(倉庫やトラック、要員)の効率化が図られるように、同時に荷主側にも従来以上のコストや品質、精度の向上が見られなければなりません。
    そのことを正面から切り出すことは少なく、どうしても顧客満足を売り込み、買う側も当然として構えています。どちらに非があるかは、見栄を張った方に違いなく、後での苦労が見え隠れしています。
    売った瞬間にシマッタ、買った瞬間にいつまで大丈夫か、と悔やむことに。
    物流サービスのコトということと、生産財になっていることの性質をきちんと理解した商談で無ければ長続きしない。
    かように、物流サービスの販売は悩ましいものであるのです。

     
     
     
     

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  • 筆者紹介

    花房 陵

    イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
    コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。

     
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