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ブログ・経営承継支援
第9回「使い勝手が良くなった会社分割スキーム」
2020年10月6日
中小企業M&Aにおいては、M&A前後にオーナー資産の処理が必要になる場面が多いです。それを解決するスキームとして、「会社分割」を利用することがあります。そこで、今回は「使い勝手が良くなった会社分割スキーム」を解説します。
まず、会社分割には、分社型分割(物的分割=縦方向の会社分割)、分割型分割(人的分割=横方向の会社分割)があります。
従来から、「分社型分割は税務的には消費税がかからない」、「権利の移転は個別同意が不要な包括承継であることから雇用契約などの一括移転が容易」といった部分が事業譲渡より魅力でした。
また、税制適格要件(会社分割を行った場合に課税関係が生じないものを適格といい、課税関係が生じるものを非適格といいます)については、M&Aの場合は、全て非適格と考えられておりましたが、平成29年度税制改正で分割型分割の税制適格要件の明確化が図られ、会社分割スキームがM&Aにおいて使い勝手がより良くなりました。
具体的には、オーナーが手元に残す事業を「分割型分割」で新会社に切り出し、元々の会社の株式を株式譲渡する「分割型分割+株式譲渡」スキームが典型的な「使い勝手が良くなった会社分割スキーム」になります。
このスキームにより、例えば、不動産事業は分割型分割で新会社へ切り出し、M&Aの譲渡対象から外して課税関係が生じることなくオーナーの手元に残すことができます。
一方、買い手は必要な事業資産のみを譲り受けることになるため、初期投資額を抑えることができ、双方に大変メリットがある手法になります。
但し、このスキームで税制適格要件を満たすためには、分割型分割により切り出した新会社の株式をオーナーが継続保有する必要があります。税制非適格となった場合には譲渡企業(旧会社)及び譲渡オーナーに税務リスクが生じます。
以上のような点に留意して、会社分割を活用していただければ幸いです。
◎関連リンク→ 株式会社経営承継支援
向 洋平
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筆者紹介
経営承継支援
価値をつなぐ、想いをつなげるM&A
中堅・中小企業の円滑な事業承継のためのコンサルティング業務と中堅・中小企業の継続・発展に資するM&A仲介・助言業務が得意。
https://jms-support.jp/向 洋平 (取締役 経営企画部長兼管理部長/税理士)
明治大学商学部卒業後、税理士事務所で税理士補助業務に従事。2004年、大手M&A専門会社で多数のM&A案件及び内部統制体制構築業務に従事。2009年、立命館大学大学院を修了、会計事務所系コンサルティング会社にて日中クロスボーダーM&A実務に従事。2015年、当社にパートナーとして参画。その後、当社福岡事務所長に就任。2018年、執行役員に就任。2019年より現職。専門は、経営計画、事業承継(相続/MBO/M&A)、組織再編、コーポレートファイナンス、資本政策に関するコンサルティング業務。 -
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