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ブログ・経営承継支援
第10回「最後の最後でM&Aに失敗した事例」
2020年11月12日
皆様、こんにちは。経営承継支援マネージャーの柿原悠佑です。今回は関東にある年商5億円弱の企業様が、最後の最後でM&Aに失敗した事例をお話しさせて頂きます。
譲受候補先は年商30億円の東海エリアの業者様でした。当初は両者にシナジーが非常にあるとして、とんとん拍子で基本合意まで進みました。ですが、買収監査期間に入って以降、少しずつ両者に亀裂が入り、最終契約作成途中に破談になりました。
理由は、基本合意後に、売り手のオーナー様が追加で条件を次々と要求されたからです。
当初より、売り手のオーナー様は、事業上の重要人物と認識されていたため、譲受候補企業としてもM&A後も協力して運営していこうという方針でした。
それを監査中に感じた売り手のオーナー様が、基本合意以降、ご自身の役員報酬の増額、法人クレジットカードの無制限使用、裁量権の明記など、追加条件を要求し始めたのです。
弊社としては、「破談につながるので控えた方が良い」とお伝えしましたが、「同じオーナーなら気持ちはわかるはずだ」とのご意見を持ち、直接交渉も辞さないとの覚悟の意思も頂戴したため、譲受候補企業にお伝えさせて頂きました。
譲受候補企業も、最初は仕方ないかとご納得頂いていましたが、2度3度と思い出したように追加条件が出てきたため、最終的に気持ちが切れてしまい、破談に至ったという顛末です。
破談申し入れ後、売り手のオーナー様から譲歩案も提示頂きましたが、譲受候補企業としては既に気持ちが切れており、再交渉には至りませんでした。
もしM&Aを検討される方がこの事例をお読みでしたら、2点ポイントをお伝えさせて下さい。①ご自身のM&A後の立場等に強いこだわりがある場合は、M&Aは最適な選択肢ではない可能性があること②M&A前に、こだわりたい条件がないか整理しておくこと、です。
M&Aにおいて、売り手のオーナー様は相手を選ぶこと、売却しないという判断ができます。ですが、相手も買収するか判断ができます。その意味で、ご両者が対等な立場で尊重しあうことが大事です。
特に、中小企業同士のM&Aの場合、どれだけシナジーがある話でも、ご両者の気持ち、感情が成約に大きな影響を与えます。
前述した2点は、言い換えれば、ご自身が選んだ相手に、オーナー(決定者)としての立場を譲る覚悟を持つこと、相手に一方的に我慢していると感じさせないよう「後出しじゃんけん」で条件を加えないこと、ということです。
「M&Aは縁もの」とはよく言いますが、その縁を壊さないための気づきとなれば幸いです。
◎関連リンク→ 株式会社経営承継支援
柿原 悠佑
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筆者紹介
経営承継支援
価値をつなぐ、想いをつなげるM&A
中堅・中小企業の円滑な事業承継のためのコンサルティング業務と中堅・中小企業の継続・発展に資するM&A仲介・助言業務が得意。
https://jms-support.jp/柿原 悠佑 (コンサルティング部 マネージャー)
早稲田大学卒業後、専門商社にて海外拠点の立ち上げを行ない、3年半支社長として活動。 その後、大手広告代理店に転職し、建設業向けコンサルティングを行ないつつ、新規契約額、件数にてトップ成績を残す。 2016年からは大手M&A仲介会社に移り、多数のM&Aを成立させ、2017年株式会社経営承継支援(現、株式会社経営承継支援)に入社。運送業やクロスボーダー案件等を中心にM&Aアドバイザー業務に従事。 -
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