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ブログ・小山 雅敬
第271回:運賃交渉が上手な会社と下手な会社の違い
2024年5月10日
【質問】最近は運賃交渉の話し合いに応じる荷主が増えて、以前より交渉しやすくなったと聞きますが、周りの同業者には運賃交渉に成功している会社と全く進んでいない会社があります。交渉のやり方などに何か違いがあるのでしょうか?
全国どの地域に行っても昨年の後半あたりから運賃交渉の環境が大きく変化しており、「運賃の値上げを認めてもらいました」という声がよく聞かれるようになりました。法改正に伴う政府の施策などの影響で2024年問題の深刻さが全国に周知され、荷主の意識が明らかに変化しています。
しかし、運賃交渉の追い風となる環境変化が進む一方で、依然として運賃の見直しが実現しない会社も見られます。運賃交渉が上手な会社と下手な会社の違いを考察すると、次のポイントが挙げられるでしょう。
①荷主や元請との付き合い方の違い…運賃交渉が上手な会社は日頃からよく荷主などと何でも言い合える関係性を築いています。荷主から共存共栄のパートナーと信頼されており、荷主の要望にはできる限り応じる姿勢で臨みますが、一方で「仕事に見合う運賃は適正にもらう」と公言しています。
例えば、首都圏にある関与先A社の社長は最近、「これからは全ての作業料を請求する」と宣言し、貨物の積み下ろし、検品作業、指定場所へのカゴ車での移動など10種類以上の作業料金を自社で設定し、荷主に請求しました。
同社の営業担当者は当初「今の料金を取り決めた際に作業料も含まれているはず、と荷主に言われたら説明ができない」と困惑していましたが、社長は「今までが異常だったので今後は正常化する」と話し、そのとおりに実行したのです。
一方、運賃交渉が下手な会社は荷主の機嫌を損なうことは一切行わず、このままの関係を維持することを重視しています。運賃交渉も自ら進んで要望を伝えることはせず、周りの環境を察知して荷主が配慮してくれることを待っています。
②計数管理の違い…運賃交渉が上手な会社は日頃から車両別損益を管理しており、運賃交渉の際も実態の原価やコスト上昇の状況を直ちに係数で示すことができます。
一方、運賃交渉が下手な会社は普段から計数管理を行っておらず、いざ運賃交渉となっても数字で説明できないため、口頭で「燃料が上がって大変です。ドライバーも集まらないので、給料を上げる必要があるのです。運賃を少し上げてもらえませんか」とお願いしています。
具体的な数値が提示されない状況では、荷主もどう見直せばよいのかわからず、交渉は一向に進展しません。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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