-
物流ニュース
進む労働時間抑制 トラック運送事業者の考え方に変化 「トラック1台でいくら稼ぐか」
2019年8月1日
「車好きで稼ぎたい若者たちに、どう説明していいかわからない」と、働き方改革に伴い、業界で進められている労働時間の抑制に対して、事業者の苦悩する声が漏れ聞こえてくる。
業界ではいま、生産性の向上が求められており、積載効率や配車効率の向上が喫緊の課題となっている。これが、事業者の考え方に変化をもたらせており、ドライバー1人に対し、1台のトラックという概念が少しずつ薄れようとしている。
「いかに1台のトラックを有効活用するかが生き残る上で大切なこと」と指摘する首都圏の事業者は、「労働時間抑制で必要以上に働かせられなくなった今、ドライバー1人にトラック1台を与えられる余裕はなくなった」とこぼす。
いまでは、2人で1台のトラックを動かすことも当たり前のようで、「ドライバー1人で、いくら稼ぐかではなく、トラック1台でいくら稼ぐか、という考え方に変わらざるを得なかった」と話す。
こうした環境の変化が、「車好きで稼ぎたいという若者を業界から遠ざけていってしまう」との声が事業者から聞かれる。
「車好きは車を大切に扱うと同時に、他人の車を運転したがらないし、自分の車を他人に運転させたがらない」という。「その代わり、責任を持って仕事をするため、労働時間に関係なく仕事をこなすし、事故も起こさない。加えて荷主の受けもいい」という。
そこでは、トラック1台で、いくら稼げるかという考えはない。おのずとドライバー1人がいくら稼ぐかということになる。
しかし、働き方改革に伴う労働時間の抑制で、以前のように働かせられなくなった。
「そうなった以上、ドライバー1人がいくら稼ぐかという、これまでの考え方では会社は立ちいかなくなってしまう」と事業者は危機感を募らせる。かといって、「ドライバーに説明しても理解は得られない。会社を辞めていってしまうことが目に見えている」とこぼす。
その結果、コンプライアンスを守る必要性を感じながらも、これまで通りのやり方から抜け出せずにいる。
「監査を受ければ行政処分は免れないが、コンプライアンスの徹底を図れば若い子たちが辞め、結局は会社が大きな痛手を被る」と苦悩する事業者は、「まるで〝まな板の鯉〟みたいだ」と現状を吐露する。
運賃とは別に荷役作業などを料金として収受する新約款制度が設けられるなど、徐々に業界を取り巻く環境が変わってきてはいる。
しかし、そうした考え方が浸透していない現状では、事業者の苦悩は続く。コンプライアンスの徹底を図って、有望な若者が去らずに、むしろ入ってくる、そんな業界にならなければ業界自体が衰退していく。行政そして業界が英知を結集して取り組んでいくことが求められている。
この記事へのコメント
関連記事
-
-
-
-
「物流ニュース」の 月別記事一覧
-
「物流ニュース」の新着記事
-
物流メルマガ