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荷主の視線に戦々恐々「ストレスの少ない職場のはずが…」
2010年11月18日
行きすぎではないのか…と思うほど、物流現場でドライバーに注がれる荷主(元請け)担当者の眼差しは厳しい。環境対策などで取引先企業の取り組みと歩調を合わせる必要性から、アイドリングを止めた車内で長時間の待機を迫られるなど、かつてはストレスと縁遠い職業として人気を集めてきたトラック・ドライバーの労働環境は、大きく様変わりしているようだ。
大手機械メーカーの運送に従事してきた兵庫県の物流会社に過日、担当ドライバーの「出入りを禁止する」という文書が届いた。理由は「工場構内でトラックを移動させる際に、シートベルトをクリップで固定したまま走行していた」というもの。「工場へ入るときは普通にシートベルトを装着しているが、構内での順番待ちでは少しずつ前へ進む動作を繰り返すため、邪魔くさくなってシートベルトを固定するようになった。ただ、他社の運転者も同じなのに…」と自己弁護するドライバーに、社長は「場合によっては会社自体の出入りを禁止される可能性もあった。面倒くさいという言い訳は通用しない」と厳しい口調で諭していた。
こんな話もある。広島県の物流会社のトレーラが、荷主である大手メーカーの工場へ入ったときのこと。「ちょうど当時は構内工事が行われていて、トラック用の走行路のわきにも工事資材が多数置かれていた」と現場の様子を説明する社長。
同社のトレーラ・ドライバーは両わきに注意を払いながら徐行運転をしていたが、トレーラが通行するのに邪魔になりそうな木材を手で動かそうと近寄ってきたガードマンに、運悪くタイヤによって跳ね上げられたその木材が直撃してしまった。幸い軽傷で済み、「ドライバーは注意を受け、翌日に事故報告書を提出。しばらく元請け事業者の安全会議に参加させられたが、その程度で済んだ」という。
こうした現場の些細なトラブルが、その後に大きなダメージとなって実運送の事業者を苦しめるケースは少なくない。「仕事をもらっている元請け事業者の敷地内に置かれたゴミ箱に酎ハイの空き缶が捨ててあり、犯人探しで大騒動になったことがある」と話す岡山県の物流社長。結局は、「傭車も含めた下請け事業者の連帯責任ということになり、『わが社の社員教育』というテーマでレポートを書かされた」と苦々しい表情で話す。
「ドライバーが靴のかかとを踏んでいたのが原因で、うるさく指導された」といったケースも多いが、なかには「積み込みのために入った食品工場の構内で、トラックを停車していた場所に数滴のオイルが漏れていたことが、後になって発覚。もちろんドライバーは気付かなかったわけだが、『その時点で報告がなかった』ということで逃走扱い。始末書や、改善に向けた計画書などを提出した」(広島県の運送会社)と、言いがかり的なものまで見受けられる。
ちなみに同社のドライバーによれば「工場の敷地に入場できるまで、何時間も周辺の道路で待たされるのに、その際にトラックの車内でタバコを吸っていて厳重注意を受けたドライバーもいる」とのことで、「それなら待合所を作るとか、喫煙コーナーを設けてくれと言いたい」と憤っている。(長尾和仁)
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