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事故が起きてから発覚 意識障害を伴う持病、判断難しく
2011年5月26日
栃木県鹿沼市でクレーン車が登校中の小学生6人を死亡させた事故は、加害者の運転者のてんかん発作が原因だったとして、運転者が自動車運転過失致死容疑で起訴された。持病を申告せずに免許を取得し、クレーン車を運転していたが、運送事業者にとっても持病を持つ従業員と事故防止の問題を考えさせられる事故だ。意識障害を伴う持病と運転免許をめぐる課題を探る。
道交法では、てんかん症状のある人は服薬中であっても、発作が抑制されていると認定されれば運転免許の取得が可能。申告には医師の診断書を提出するが、逆に発作の可能性があれば免許の取得はできない。先のクレーン車の事故は、運転者は発作が原因で事故を以前にも数件起こしていた。本人の申告によらなければ判断が難しいのが実情だ。ある警察関係者は「免許の取得や更新時に、自己申告欄に虚偽内容を書いても、それだけでは判断がつかない」と話す。発覚するのは事故が起きた後だ。「事故状況の調査や周囲の話、取り調べをして意識障害のある持病があったことなどがわかる」という。
運転免許の取得が制限される場合がある一定の病気は、てんかん以外にも認知症、統合失調症、再発性の失神、無自覚性の低血糖症、躁うつ病、重度の睡眠障害などがある。病状によっては自覚症状がない場合もある。警察関係者によると、認知症患者で本人には自覚がなく、免許の更新で高齢者講習を受講した際に、受講の様子から講師が認知症に気がつくこともあるという。
警察庁ではクレーン車の事故を受け、運転免許の申請手続きで、意識障害がある持病がある人は適正に申告するように促しているが、申告自体は義務化されていない。また、運転適正相談窓口の周知を進めており、ある担当者は「更新時だけでなく、高校を卒業して新しく免許を取る人も、授業中に気を失ったことがあるなどの経験がある人は相談してもらいたい」と話す。
患者団体である日本てんかん協会は、クレーン車事故について「極めて遺憾」とする声明を出している。多くのてんかん患者は適切な治療を受け、自己管理して免許を取得し、症状によっては免許取り消しを受けたりしている。法的には、条件を満たせばてんかん患者の二種免許、大型などの取得は可能だが、重大事故につながる可能性があることから、患者団体としては運転を職業とする免許の取得は推奨していないという。
かつて、てんかんに対する理解度も低く、発覚すると採用すらされない時代もあった。現在はてんかんを理由とした解雇は減り、今回の事故以降もそうした報告は同協会にはない。むしろ、持病を持った従業員に、どのように働いてもらうかという考えが雇用側にあるという。
関東運輸局の監査担当者によると、本人が隠していたために病状が把握できない場合、直接それを理由に行政処分をすることはないという。健康診断の実施など状態把握に努めていれば、雇用側の責任は追及されない。ただし、病状を知った上で乗務させての事故であれば、管理責任を問われかねない。従業員も雇用する側も、病気に対する適正な理解と適切な治療が大切のようだ。(千葉由之)
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