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    コンプライアンスの順守がカギ 行政処分2社のケース

    2011年9月16日

     
     
     

      「備えあれば憂いなし」。何事も準備を怠ると、良くないことが降りかかってくるようだ。社会的規制が強化され、それにともない行政の監査体制の強化も進んでいる。監査を受ければ、会社の不備を指摘され、たちまち車両停止などの行政処分が発出されるだけに、コンプライアンスの徹底が求められている。事業者にとって法令順守も大切な取り組みだが、処分の原因となる監査を回避するということも重要な取り組みの一つだ。特別監査から事業停止処分に至った2社のケースをもとに、対策を考えてみたい。



     食品輸送を展開する首都圏の事業者は、昨年に発生した事件をきっかけに特別監査を受け、今年、事業停止処分となった。労働時間を守っていないなどの法令順守の徹底に問題があったことは否めないが、きっかけはドライバーのありえない行動だった。

     同社のドライバーが納品へ向かう道中、ミラーが年配女性に当たるという接触事故を起こした。しかし、ドライバーは無視して納品に向かったという。

     その道は、納品の行き帰りに通らなければならない道だったので、帰る際、その道を通ったところで警察官に逮捕された。いわゆるひき逃げだ。

     幸いにも女性は軽傷で済んだが、ドライバーは事故に対して当初、否認を続けた。現場に破片などの決定的証拠があり、目撃者もいたことから事故を認めたが、この一連の行為が悪質とされ、それがきっかけで公安委員会から国交省へ通報。運輸局の特別監査を受けることとなった。

     もともと労働時間などに不備があり、法令順守への取り組みを怠っていたという同社は、監査で事業停止処分を受けた。事故の被害者である女性は軽傷だったため、ドライバーが逃げずに事故処理などを行っていれば、事業停止というケースにならなかったかもしれないだけに悔やまれるところだが、ひき逃げをさせた同社の従業員管理に問題があることは、忘れてはいけない。

     一方、同じく首都圏の事業者は、ドライバーが通勤中に倒れたことで特別監査を受け、事業停止処分となった。勤務する中年男性が、通勤中にクモ膜下出血を発症し亡くなった。当然、通勤中ということで同社は労災を申請する。するとすぐに労基署の監査が入った。クモ膜下出血という病気から、労基署は過労を疑ったのだという。

     同社では、労働時間をまったく守れていなかった。是正勧告を受けたが、労基署から国交省へ通報が入り、運輸局の特別監査も受けることとなった。その結果、不備を指摘されて事業停止処分となった。

     同社の場合、通勤中でもあり、労災申請は仕方がないことだが、自社で死亡事故を起こしたわけでも悪質な違反を犯したわけでもない。労基署の監査、さらには運輸局の監査を受けざるを得なかったことは、「何とも解せないこと」としている。

     しかし、労基署が入った際、しっかりと管理できていたら国交省への通報はなかったはずで、その後の運輸局の監査は自業自得といえる。

     二つのケースのように、いつ会社に監査が入るか分からない。ただ、いずれもコンプライアンスの徹底を図っていれば、行政処分は免れたかも知れないということも忘れてはいけない。最も有効な手立ては法令順守であることは言うまでもない。(高田直樹)

     
     
     
     
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