-
ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(392)ビジョンをはっきりする―3
2022年9月19日
面談の山場に差し掛かってきた。人事部長は暗い顔をしていた。一見すると年間3億円もの利益を上げ続けている会社にどんな悩みがあるのか、不思議な気がする。
「そうすると社長がビジョンを示さないということですか」「そうです。うちの社長は、そりゃあ優れています。しかし未来を決して言わないのです。未来を語っても仕方ない面もあるんです。いわば受け身の会社ですからね。部長クラスの平均年齢は58歳ですし、社長も子どもがいないし、これから会社はどうなるのか不安ですね。先生はどう思われますか」
「私が思うには、活力の源泉は人ですし、人を本質的に元気にさせてくれるものは未来への希望だと思います。ビジョンですね。社長は勇気を持って社員にビジョンを示すことですね。会社は永続しなければなりません。社長の年とともに、衰えて消えてなくなるものではありません。今度、社長に会わせていただいてその点についてアドバイスしたいと思います。価値観の大切さについてアドバイスします。ビジョンがメシを食べさせてくれるくれるわけではありませんが、メシさえ食べられればいいというものではないと思います。おいしく食べることが大切です。マネジメントの現実は、『黒い猫でも白い猫でもネズミを捕る猫がいい猫だ』という面と、生き方のスタンス、価値観を重視する面とのバランスで成り立っています。社長はビジョンをはっきりさせて中期の経営計画を作成することが大切だと思います」
ビジョンとは何か。「それは既知の世界から未知の世界を描く『思考の旅』である。既知の事実、願望、夢、危険、機会を材料に使って、未来を創り出すことである。トーマス・ジェファーソン(アメリカの独立宣言の起草者で第3代大統領)やカール・マルクスの『思考の旅』が国家を導いたように経営者の『思考の旅』も企業を導き、〝エクセレントカンパニー〟を創りあげるのだ」(『エクセレント・カンパニーを創る』ヒックマン・シルヴァから引用)
ビジョンは個人と企業にとって必要である。個人ビジョンと企業ビジョンは全く別物ではなく連動する、重なり合う部分が活力を生み、育む。
そのためには企業のビジョンが何か、徹底して浸透させることである。そうすることで個人に接近し、参画を求めていく。
そして企業のビジョンは、個々のビジョンを最大限実現しうるものとして決められるべきである。
つまり一人ひとりが楽しく仕事ができるように、配慮することだ。それは各個人の働くスタンスによってそれぞれである。いろんな人がいて結構であり、楽しく仕事をしてほしい。そのために企業ビジョンを示さなければならない。
社長の最大の任務は、このビジョン作りにある。ビジョンに基づいて基本経営目標を確立していく。一度しかない人生だ。人生というカンバスに思い切り、イメージを持って描いていく。このイメージこそビジョンである。
関連記事
-
-
-
-
筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
「ブログ・川﨑 依邦」の 月別記事一覧
-
「ブログ・川﨑 依邦」の新着記事
-
物流メルマガ