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ブログ・小山 雅敬
第268回:法律改正後に第二種利用運送事業者が留意すべきこと
2024年3月22日
【質問】先般2月13日に「流通業務総合効率化法」と「貨物自動車運送事業法」の改正案が閣議決定され、通常国会に提出されたと聞きました。弊社はトラックを所有せず、3PL事業を中心に行う第二種利用運送事業者ですが、どのような点に留意すればよいでしょうか。
今回の法律改正は2023年6月に発出された「物流革新に向けた政策パッケージ」(以下「政策パッケージ」)に基づき、主要部分の具体的な法制化を意図して行われるものです。
荷主と物流事業者双方に関する改正案は「流通業務総合効率化法(名称変更予定)」に盛り込まれ、貨物自動車運送事業者等に関する改正案は「貨物自動車運送事業法」に盛り込まれています。第二種利用運送事業者も今回の法改正により、少なからず影響を受けることになりますので留意する必要があります。
まず、荷主に課せられた努力義務である「運転者の荷待ち時間の短縮及び運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の増加を図るための措置」に対し、利用運送事業者には「荷主からの協力要請に応じる努力義務」が課せられます。
つまり、利用運送事業者は荷主ではありませんが、実質的に荷主と同様の措置を講じるよう求められています。
また、3PL事業者の多くは物流センターを所有しており、貨物利用運送事業の他に倉庫業を兼営しているケースが大半です。
今回の法律案には「貨物自動車関連事業者」として倉庫業者に対して努力義務が課せられています。「自ら管理する施設又はその周辺における運転者の荷待ち時間及び当該施設における運転者の荷役等時間の短縮を図る」努力義務があり、具体的には「受け渡しの日時を伝達するに当たり、一時に多数の貨物自動車が集貨場所等に到着しないようにする」「荷役等を行わせる場合は停留場所の拡張、搬出、搬入の迅速な実施、荷役等の円滑な実施を図る」等の措置を求めています。
また、大型の3PL事業者は年度の貨物保管量も多くなりますので、基準保管量を上回り「特定倉庫業者」に指定される可能性が高いと言えます。その場合は特定荷主と同様に特定事業者となり、中長期計画の作成と定期報告が義務付けられます。中長期計画に基づく取り組みの実施状況が不十分な場合、勧告や命令を受ける可能性があります。
その他、運送契約の締結に際し、役務の内容やその対価を記載した書面による交付が義務付けられますので、運賃と料金の区分等を含めて委託先の運送事業者と協議する必要があります。法施行までの一年程度の期間中に法律に則って準備を進める必要があるでしょう。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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