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ブログ・小山 雅敬
第153回:標準運送約款の改正を経営に生かす行動とは
2019年4月2日
【質問】昨年11月に標準運送約款が改正されましたが、待機時間料などを書面化して荷主と交渉した話をあまり同業者から聞きません。実際に他の運送会社は、どのような対応をしているのでしょうか? また新標準運送約款を、今後の経営に生かすためにはどのように行動すればよいのでしょうか。
昨年11月の標準運送約款改正は、運送業の積年の課題に切り込んだ画期的な内容であり、久し振りに運輸行政の存在感を感じたものでした。
この改正を受けて、弊社の顧問先運送会社では、すぐに新標準約款に基づく料金の届け出を行いました。旧約款の届け出など考えもしませんでした。各社ともに運賃交渉は早期から進めていましたが、待機時間料に関しては依然としてあいまいな状態が続いていました。料金の届け出にあたり、待機時間料等の単価を算出すると高額になり、荷主に請求することを躊躇する経営者もいました。しかし、堂々と正当な料金単価を設定し、それを請求すべきと伝え、実行してもらいました。
料金の届け出自体は簡単ですが、荷主との交渉が難題と考える会社が多いと思います。しかし、昨今の人手不足の影響で、荷主との関係が従来の下請け従属的な関係から対等に交渉できる土壌に変化してきました。人手不足は運送経営の逆風ですが、対荷主交渉では追い風です。取引条件を改善する好機が到来しています。昨年の標準運送約款改正後、顧問先以外の運送会社も同様に対応するものと思いましたが、運送業界全体を見ると、いまだに半数未満しか料金届け出をしていないことが報じられています。
なぜ、この好機に行動しないのか不思議です。長期間続いた荷不足時代に取引を切られたトラウマが一部残っているのかもしれません。しかし、運賃の改善は自社が交渉しない限り実現しません。荷主に標準運送約款改正の内容を説明するのは、運送事業者自身の仕事です。荷主が自身の業界に無関係な標準運送約款に無関心なのは当たり前のことで、荷主に周知が不十分だから運賃交渉ができないというのは、自らが行動しない理由にはなりえません。
弊社の顧問先は、標準運送約款改正のリーフレットを荷主に持参して説明していました。また、運送委託契約書を作成せず、運送の都度、荷主と合意した運賃で受託している会社も見受けられますが、「1台一日いくら」などと大まかな取り決めでは、時間がコストとして認識されません。これからは書面化したほうが良いですし、実際に書面化している会社の収益力が高くなっています。標準運送約款改正を利用して運送委託契約書と覚書を作成する行動こそ重要です。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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