-
ブログ・小山 雅敬
第154回:オール歩合給は採用できないのか?
2019年4月16日
【質問】従業員数18人の運送会社です。従業員の大半はドライバー経験が長いベテラン社員です。給料は分かりやすい歩合給がよいという要望があり、従来から全額を売り上げ歩合で支給しています。しかし先日、ある人から「オール歩合給は認められないのでは」と聞きました。従業員の要望でもオール歩合給は採用できないのでしょうか?
給与の計算方法は、会社と社員が合意した契約(通常は賃金規定)で決めればよく、給与計算自体、すなわち歩合給計算自体が問題になるわけではありません。歩合給は「出来高払い制(その他の請負制)」という名称で労働基準法に明記され、認められた計算方法です。
しかし、時間外労働や深夜労働、休日労働などがある場合は、給与額の全てを歩合給だけで構成することは出来ません。法定の割り増し賃金を別に支給する必要があります。歩合給の割り増し賃金の計算式は、通常の固定給の計算とは異なり、賃金計算期間中の歩合給総額÷賃金計算期間中の総労働時間×(時間外労働時間・深夜労働時間・休日労働時間)×割増率で計算します。総労働時間は所定労働時間に時間外労働時間を加えたものです。割り増し率は時間外手当、深夜手当ともに0・25となります。休日手当(法定休日の場合)の割増率は0・35です。歩合給の場合は、所定外労働の時間給部分は歩合給に含まれているため、割り増し率は通常の1・25や1・35ではなく、0・25や0・35となります。この割り増し部分は明確に区分して、別に支給する必要があります。
また、ご質問のオール歩合給の場合は、歩合の占める割合が給与総額の4割を超えていますので、法律上の「保障給」を定める必要があります。運送業の場合は「通常の賃金の6割」以上を保障する必要があります。つまり仕事が少なく配車が組めない場合であっても、勤務した時間数に応じて通常の賃金の6割以上は支払う義務があるということです。
この場合に注意すべきことは「それでは月10万円を保障給にしよう」と考えてはいけません。保障給を固定金額で定めた場合、その保障給は固定給とみなされ、通常の割り増し率1・25(または1・35)が適用されるためです。保障給の算出方法は、まず過去3か月の賃金総額を、その3か月間の総労働時間で除した金額(=通常賃金の時間給)を算出し、その6割の額(=保障給単価)に当該(その月の)賃金計算期間中の総労働時間数を掛けて算出します。なお歩合給の場合、賃金規定に「通常の賃金の6割を保障する」旨の記載が必要ですので注意してください。さらに法定の最低賃金を下回ることがないように気をつけます。これらの要点を抑えたうえで現行の賃金を修正すべきでしょう。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
関連記事
-
-
-
-
筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
「ブログ・小山 雅敬」の 月別記事一覧
-
「ブログ・小山 雅敬」の新着記事
-
物流メルマガ