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ブログ・野口 誠一
第396回:思い詰めた若い経営者
2013年1月21日
一昨年のことである。年の頃は40半ばか、まだ若い経営者がいきなり、「助けてくれ」「何とかしてくれ」と八起会へ駆け込んできた。八起会は「倒産駆込寺」と言われており、そうした光景は日常茶飯事だが、そのときばかりは驚いた。なんと、その若い経営者はすっかり死神にとりつかれていたのである。よほど「死にたい、死ぬしかない」と思い詰めたのだろうが、それではなまじの経営相談では埒が明かない。さながら人生相談の様相を呈していく。
死神を落とすには、何をおいても本人に思いのたけを語ってもらうしかない。それがどんなに身勝手な話であろうと、まずは黙って耳を傾けねばならない。それが長年の経験から得た私の流儀である。そのときも私は自己流に徹し、若い経営者Aさんの話にじっくりと耳を傾けた。Aさんに限らず大方の相談者は、洗いざらい心をさらけ出せば気が楽になり、他人の話に耳を貸す余裕もできる。そこからが本当の人生相談であり、経営相談である。
Aさんのときも、その手順を踏んだ。が、Aさんがすべてを語り終えたとき、私の心は微妙に揺れていた。Aさんの話を自分だけの胸にとどめておいてよいものかどうか、その迷いである。できれば八起会会員に聞かせたい事例である。そう思った瞬間、私はぶしつけにもAさんに、「今の事例を私どもの会員に話していただけませんか。八起会は月に一度、勉強会を開いています。そこで話していただけませんか」と頼み込んだ。
Aさんが面食らったことは言うまでもない。限りなく人生相談に近い経営相談にやってきて、いきなりその経緯を発表しろと言われては無理もない。そこから私たちは真剣に話し合った。いわばガチンコ勝負である。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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