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    <長距離フェリー>高速割引で大打撃、相次ぐ廃止・休便

    2009年7月22日

     
     
     

     高速道路通行料金の割引が長距離フェリー業界に大きな打撃を与えている。これまで優良顧客だった大型トラックが急速に「道路」に流れつつあり、フェリー各社は「船を動かせば動かすだけ赤字」となる危機的状況に直面、一部航路の廃止・休便も相次いでいる。日本長距離フェリー協会の米田真一郎会長(阪九フェリー社長)は「このままでは航路網が崩壊し、公共輸送機関としての使命が果たせなくなる」として8日、国交省海事局の伊藤茂局長を訪ね、長距離フェリーの危機対策について要望した。


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    米田真一郎会長
     要望は、同協会の総会決議に基づくもので(1)上限1000円をはじめとする高速道路料金の大幅引き下げ実施期間を「2年以上」に延長しない。また上限1000円の適用をこれ以上平日に拡大したり、全車種平日3割引など各種割引をこれ以上拡大しない(2)09年度第2次補正予算、10年度予算で、さらなるフェリー・旅客船への支援措置拡充を図る(3)地方公共団体でも港湾施設使用料の軽減措置を含め、より一層の支援措置を講じるよう国が地方に指導する(4)海上へのモーダルシフト推進施策を一層強力に進める――の4項目の実現を求めた。
     長距離フェリーは国内の物流・人流で大きな役割を担い、とくにモーダルシフトでは環境に優しい輸送モードとして近年、脚光を浴びてきた。それが度重なる高速道路料金の割引拡充から、高速道路との競争条件が大幅に悪化し、利用者離れを誘発。関西―九州航路をはじめ関西―四国、中京―表東北、関東―九州の各航路の輸送実績は昨秋以降、急速に落ち込み続けている。
     「例えば、大阪から九州まで大型トラックなら高速料金が2万円、燃料が1万円で計3万円。これに対応してフェリー料金も設定してきた。半額割引だと2万円で行けるので、そっち(道路)に向かうのは当然」と米田氏。
     かつては大型ドライバーの不足やドライバーの疲労、事故防止対策からフェリーを利用していたトラック業者も「コスト削減を優先して離れつつある」。また、トラック業者が「安全と安心」を求めても荷主企業が「フェリーを使わず道路を走れ」と指示するケースもあるという。
     CO2排出削減でも、ついこの間まで「モーダルシフトを担う基幹輸送モード」としてフェリーを高く評価。対外的なイメージ戦略や全社的な環境への取り組みからフェリー利用を促進してきたが、「コスト削減」の大号令で、なりふり構わず道路を走らせるケースもある。
     「自由競争の下、道路会社が自己資金で料金を引き下げた結果なら仕方ない。『われわれも頑張ろう』と言うだけだ。しかし国策として税金を投入しての引き下げで生じたアンバランス、副作用は断じて容認できない」と訴える。
     阪九フェリーの場合、年間売上高は120億円規模だが「今のままなら今年度は30億円の売り上げ減になる」と予測。「秋口までに運航する便数を減らすかどうかシミュレーションで決める」方針だが、「この不況の中、大規模な人員削減などは回避したい」という。
     高速料金割引は「正に寝耳に水。去年の夏頃、『高速道路の割引政策があるらしい』と聞いた。その後、あっという間に実施され、割引率その他も拡大の一途をたどっている。本来は競合する輸送モードにヒヤリングを行うなど慎重に進めるべきだったのでは」と疑問を投げかける。
     国の09年度の海事関係補正予算は600億円。このうちフェリー・旅客船の「高速道路問題支援対策費」(ソフト施策)として30億円が計上された。
     
     米田氏は「厳しい財政状況の下では高く評価するが、この予算額では到底、長距離フェリー各社の危機を補うことはできない」と指摘。このため「4つの要望事項すべての速やかな実現が業界救済に向け必要不可欠」と強調する。新設された30億円の使い方は「高速道路に対抗する新企画商品の開発・販売での補助」など現在、海事局と調整中だが、間もなく補助制度の具体的な内容が発表される見込みだ。

     
     
     
     
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