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    国際会計基準(IFRS) 物流業界に大きな影響

    2011年6月27日

     
     
     

    truck2_0627.jpg 2015年にも上場企業すべてに強制適用するはずだった国際会計基準(IFRS)が延期されることになった。延期の時期や具体策は今月末に開かれる金融庁の企業会計審査会で検討するが、日本経団連などは「導入を決めてから5年以上の準備期間を置く」よう求めており、強制適用は最短でも17年以降になる公算が大きい。IFRS導入は単に「上場企業の会計基準の問題」ではなく、物流にも大きな影響を及ぼすと指摘されているが、一部大手を除き、各企業とも関心は薄いようだ。宅配事業などで従来のシステムでは「荷主ニーズ」に応えきれず、結果的に淘汰される可能性もあるというIFRS導入問題を探った。



      IFRS導入で大きく変わるのは「在庫」や「売り上げ」の管理。例えば百貨店の消化仕入れ(委託販売)は日本基準では「総額表示」だが、IFRSでは「純額表示」。これで百貨店業界の総売上高は一気に落ち込むと見られている。タバコの売り上げはほとんど税金だが、新基準では税金は売り上げ計上できず、導入後の日本たばこ産業の売上高は数兆円規模で縮小するという。

     日本基準では「売り掛け」も売り上げに計上できるが、新基準は「顧客に対する履行義務が完了した時点」で初めて売り上げとみなす。「売った」「買った」が原則として、時間的にも空間的にも一致しなくてはならない仕組みだ。宅配では届け先の「ハン取り」(受領印)で初めて売り上げになる。「積送品」(手元在庫ではなく委託販売先の在庫)についても、安易な売り上げ計上は不可能になる。

     物流分野で新基準移行の影響が最も大きいのが宅配便市場。ヤマトホールディングスは2年前にプロジェクトチームを組織し、新基準導入で予測される影響とその分析を行ってきた。現在は「影響が大きなケースでの具体的な対応策を検討している段階」に入った(財務戦略担当IFRSプロジェクト佐藤大輔アシスタントマネジャー)。「現在『発送』データで売り上げにしている部分を『配達完了』データに置き換えなければならない」のが大きな課題で、「システム更改には数億円程度かかる見込み」(飯野美彦プロジェクトマネジャー)という。

     宅配に限らず上場企業の会計管理が直接影響する特積み会社(旧路線会社)に現状を聞いた。

     「セイノーホールディングスの経理が主体で対策チームを作っている。対策チームからの指示待ち」(西武運輸)、「大企業の新基準導入に便乗して中小も売り上げ管理を変えるかもしれない。システムを抜本的に見直す必要があり、日本路線トラック連盟のサーバー利用による配達完了システムを検討している」(宇和島自動車運送)などのほか、「現時点では日本基準とIFRSの違いを勉強しているところ。課題となる点も調査中」「荷主から具体的な話が出てこないと検討は難しい」といった回答が多数を占めた。

     総じて積極的な取り組みは見受けられないが、国際物流総研の岩?潔氏(国際物流アカデミー学長)は「IFRSが導入された場合、新基準の荷主と旧基準の荷主が混在する状況になる。その時点で新システムを構築しているほうが採択されるだろう」と警告する。

     影響が出るのは大手ばかりでなく、中小トラック事業者も「例外ではない」と同氏は主張。「百貨店などの配送業務では、やはりハン取りが重要。あるいは配達完了情報を要求される。システムが構築されてないと、受領印をもらった伝票を大量に束ねて渡すしか方法がなく、『こんな紙が要るか』と怒られるかも知れない」と懸念する。

     延期されるとはいえ、わずか数年延びるだけ。トラック経営のトップが「分からない」では済まされない問題だ。 (土居忠幸)

     
     
     
     
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