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    運賃節約の「値入れ」 大手荷主の入札で値崩れ激化

    2012年7月2日

     
     
     

    truck2_0702.jpg 下限が見えない運賃競争。運賃が完全自由化になっている現状で、荷主企業の中には、効率的に物流コストを削減するため同業者同士で運賃を競争させ、極限まで運賃コストを切り詰めようとしているところもある。入札制度を採り入れている荷主であり、業界関係者の間では「値入れ」と呼ばれている。「このままでは運送業者は荷主のいいように食い物にされるだけ」。関西のある運送会社は、一部上場の大手荷主企業の入札制度に参加しているが、競合他社の法令を度外視した様子に将来の不安を覚え、「値入れ」を告発する。



     平成15年に運送業を開始した関西のある運送会社。車両は46台を保有し、大型車以外に、4トン車6台、トレーラ7台を持ち、長距離輸送と中距離、地場を半々で事業展開している。社歴は浅いが、直接取引している大手荷主企業がある。

     
     その大手荷主は年に1回、運賃改定のために入札を実施している。大手荷主には3社の運送会社が入っており、運送会社が関東行きの見積もりを出すが、一番安い運賃を提示したところが一番多く荷物を確保できるシステムをとっている。

     今年も3月に入札が行われた。入札には、告発したA社とB社、C社の3社が参加。A社は関東まで8万円の運賃を提示した。全体の荷扱い量を10とすると、荷主はA社に1割の仕事を提供。B社は7万5000円の運賃を提示し、3割の仕事を約束。また、C社が一番安く7万円を提示したが、荷主はC社に全体の6割の仕事を出すことになり、現在、運賃通り各社が仕事をこなしている。

     つまり、このシステムでは、物量を増やす、または物量を取り返すには値段を下げるしかない。一方で、荷主は大幅な物流コスト削減が図れているという。

     今回8万円を提示したA社は、もともと月1000万円の仕事があったが、入札制度が導入されてから仕事量は他社に流れて行き、月の売り上げはここ数年300万円と落ち込んでいる。

     「東京までを大型車で、片道7万円の運賃で行く事業者はいっぱいいる。うちは原価計算をしており、損をしてまで行くのは止めておこうという判断で、この線からは下げていない」とA社社長。「昔は、東京まで14万?16万円の運賃であったのが、今は半値。6万円で行くところもある」と現状の安値合戦にお手上げ状態だ。

     今回の入札で6割の仕事量を確保したC社。A社によるとその運送会社は、帰りの運賃は6万円で往復13万円。古い年式のトラックを動かし、廉価品のタイヤを履いて任意保険は未加入。高速道路には乗せず、運転者の社会保険は未加入で、給料は日当払い(パート社員化)、燃料は100円以下の闇業者から仕入れたと思われる燃料を使っており、「何とか採算が合うという状態。最低のコストで違法なことをすれば可能だ」という。

     また、「そんな業者に監査や指導がまったくない。大きな事故さえ起こさない限りは安い運賃で客先に営業できる。法令を順守している会社は、このような会社と同じ運賃で行ける訳がない」と訴えるが、入札制度を実施しているのは、今回の大手荷主だけではないという。

     「昨年、12万円の運賃を出していた荷主に他の運送会社が『8万円で行ける』と営業をかけ、荷主が『○○運送が8万円で運ぶとのこと。8万円で行けるんじゃないの?』と値段が下がった。荷主にとってこんないい時代はない。運送事業者も襟を正していかないと、いずれ業界が崩壊してしまう」。A社社長は将来に不安を感じている。(大塚 仁)

     
     
     
     
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