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黒字のカギは信念 赤字でも断らない事業者と断る事業者
2012年11月30日
中小・零細企業が9割を占める運送業界にあって、全国6万社の企業が日々、生き残りを掛けた激しい競争を展開している。燃料コストや人材不足などの諸課題を抱えながらも、荷主ニーズに応じて、いかに効率よく安価に、そして安心・安全に荷物を運ぶか事業者の手腕が真に問われる時代となった。こうした厳しい中で、しっかりと地に足のついた経営を行っている事業者も少なくない。そこには、考え方こそ違うが、経営者の確固たる信念、哲学がある。
「絶対に断らないこと」を経営理念とする千葉県の事業者は、荷主からの依頼に、これまで首を横に振ったことがないという。当日便を依頼してくるなど、荷主の急な依頼は頻繁だ。忙しい時など、自車で対応できなければ傭車を使うことになる。運賃水準が下がり続けている今、傭車を使って赤字になる仕事もある。しかし、それでも仕事を断らないのが同社の姿勢だ。「うちのような零細企業が生き残っていくためには、選り好みをしていてはいけない。どんな案件にもビジネスチャンスが転がっている」という。
「当日便を依頼してくるということは、荷主が困っているという証拠。それをできないと断っていたら次からうちへの依頼は来ない」という。赤字になるならやらない方がマシとの声もある。「困ったときに、いつも助けてくれるというイメージが先行すれば信頼関係が築きやすく、突発的な仕事だけでなく、安定収入が見込めるチャーターの仕事が増えてくる」と指摘する。
目先の利益を見るのではなく、将来を見据えて仕事をこなしているという同社は、景気が上向かない厳しい状況にあっても、しっかりと売り上げを伸ばしている。
一方、埼玉県の事業者は、採算の合わない仕事には手は出さないという。「安い運賃に手を出せば、無理が生じ労働環境が劣悪になる。交通事故や貨物事故も増え、しわ寄せがくる」と指摘する。法令を順守し、ドライバーが安心して働ける環境を整備するのが経営者の役割だという同社長。「適正運賃を収受するには、輸送品質の向上しかない」と断言する。
採算の合わない仕事には一切手を出さない同社だが、採算の合う仕事に対しては、コンプライアンスの徹底を図った高品質な輸送サービスを提供することで、順調に業績を伸ばしている。
合わない仕事を断る事業者と、断らない事業者。対照的な事例だが、いずれも業績は安定している。厳しい時代に業績を伸ばす事業者とは、経営者の信念を貫くということなのかもしれない。(高田直樹)
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