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閑散地にも時間指定 通販物流のサービス競争激化でしわ寄せ
2013年2月13日
インターネットの普及に伴って通販事業が急速に伸びている。通販各社は顧客獲得のため送料無料や時間指定といったサービス競争を繰り広げているが、サービス競争の激化で大きくしわ寄せを受けているのが運送会社のようだ。通販荷物を扱う奈良市内の運送会社は、家具、ベッドなどの宅配を行っているが、1月から通販会社が十津川村までの時間指定サービスを開始。同社は10年近く宅配事業に携わっていたが、今月いっぱいで通販荷物の仕事をやめることにした。
大手運送会社が小さい家具を配達し、同社が大きい家具を2マンで扱っている。配達料は年々下がっており、1件につき3000円、組立料は1000円から1500円。面積が日本一広い村である十津川村は陸の孤島と言われるほど山深い中にあり、車の走行もままならない。同社では人口の集中する県北部では時間指定に応じていたが、十津川方面となるとそうはいかない。「午前8時に出て昼着、家具を3時間で組み立てて、戻るのは午後7時」と非常に効率が悪い。そのため吉野方面(県南部)の配達が出たら、1週間程度余裕を見て、他の通販の商品と抱き合わせて、お客と連絡を取り合って出かけていた。
しかし、いかなる閑散地でも時間指定を受けないことにはお客が取れないと判断した通販業者は、宅配業者に無理難題を突きつけてきた。通販の仕事は2件の大手運送会社が受けた後で、同社が運ぶ。通販会社からは6000円の運賃が出ているが、大手で3000円抜かれる。他の通販荷物でも大手1社が3割手数料を抜いており、運送会社社長は「割に合わない。大手はピンハネして請求するだけ。現場を知らない」と怒る。通販の仕事からの撤退を決めたが、すかさず次の運送会社が決まったという。
通販商品の宅配に困惑するところは少なくない。大阪のある事業者も長年、通販商品を扱っているが、「事業者泣かせだ」とぼやく。通販の商品は外国製が多いが、「粗悪品も少なくない」という。取扱説明書通りに家具を組み立てても穴を開ける場所が異なり、扉が閉まらない、といったケースがあるという。その場合、家具を持って帰るが、組み立てに2時間かかっていても作業料金は一切発生しない。組立料金は3時間以内としており、家具によっては30枚から40枚の部品で構成され、5?6時間かかるものもあるがオーバー分の料金はもらえない。
家具のひび割れもあり、このような不良品について通販会社と押し合いになることも少なくない。通販会社から「運んだおタクの責任。弁償して」と、同社が実費で修理代を支払ったこともあるという。仕事欲しさに昨年、通販の仕事を始めた関西のある運送会社。社長は「通販の運送はババ抜き状態だ」と漏らす。やはり低運賃で時間指定などの条件が厳しく、採算的に合わないという。共働き世帯が増え、真夜中の配達も増えており、従業員は雇ってもすぐに辞めてしまう。撤退すればいいのだが、次の運送会社が来るまで仕事を続けるという契約を結んでしまい、現在、次に契約する運送会社を待っている状態という。(大塚 仁)
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