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ベア実施37% 賃上げ状況の実態を聞き取り調査
2014年4月4日
今年の春闘では、自動車、電気、鉄鋼をはじめ各業界で大企業を中心にベースアップが実現した。一方で、中小企業に目を移すと信金中央金庫が3月に全国の信金を通じて取引先1万5700の中小企業を対象に行った調査では「従業員の賃金を引き上げた」は16%にとどまり、83%は「様子見」「景気が不透明」「業績低迷」という理由で賃上げを行わないとしている。一部報道では、中小・零細は大企業のベアと消費税アップのしわ寄せで一層厳しい状況に立たされるのではないかとの指摘もなされている。こうした中、トラック業界ではベースアップについて、事業者はどう考え、どう取り組もうとしているのか。弊紙は全国の事業者を対象に緊急アンケートを実施した。
従来、トラックドライバーの給与体系は歩合色が強く、「やればやっただけ稼げる」ことが魅力ともなっていた。運賃と仕事量によって変動する給与体系では、ベースアップの考え自体が希薄になる側面もあるが、全国の100社の事業者を対象に行った独自アンケートでは、36.7%と、4割近い事業者が「ベースアップを実施する」と回答し、信金の調査結果の16%を大きく上回っている。また、歩合給を採用している事業者では「運賃が上がってきており、給料は上げる予定」と話す事業者もいるものの「昇給月という考え方自体がない」という事業者が圧倒的に多く、これら実質的な賃上げも含めると、給料アップとなるドライバーは少なくないと予想できる。
ベースアップを実施すると回答した4割の事業者からは、「ルート配送がメーンで、ほぼ固定給。昇給をしなければやりがいがなくなる」(埼玉県の事業者)と昇給の必要性を指摘する声や、「以前から定期昇給を導入している」という事業者が多く存在した。
また、「現在の従業員に長く勤めてもらうため」(岡山県の事業者)や、「ドライバー確保も狙い」(広島県の事業者)という声、さらに、「消費税も上がるのでドライバーの生活を考えて」(埼玉県の事業者)など、ドライバーの満足度を高める手段として、ベースアップに踏み切る事業者も少なくなかった。
トレーラがメーンの千葉県の事業者が「安定した人材確保と輸送品質の向上には昇給が不可欠」と話すように、けん引免許など特殊な技術を要する配送を手掛ける事業者では、良い人材を獲得して教育し、長く務めてもらう目的でベースアップなど待遇面へ配慮している事業者が多くみられる結果となった。
人材不足や品質向上を志向して4割の事業者がベースアップを行うのに対し、63.3%の事業者が、賃上げはしないと答えている。理由として、「運賃が上がらない」「燃料が下がらない中での賃上げは無理」「残業代がかさむので上げられない」と、苦しい経営状況が背景にあるようで、中には「仕事量の減少」(関西の事業者)を挙げる事業者も存在した。
6割の事業者のほとんどが「したくてもできない」という理由を挙げるが、中には「あえて上げない」という事業者も存在した。「ドライバーは契約社員。もともとスキルを求めないし、誰でもできる仕事だから」というのは東京都内の事業者で、ドライバーという仕事に対し、割り切った考えを持っている。「指示されたことに対し、当たり前のことを当たり前にやってもらえればいい」とした上で、「ドライバーに限っては昇給は一切考えていない。昇給を望むのであれば、トラックを降りて別の仕事に就くことを勧めている」と徹底している。
今回のアンケートでは、事業規模や運賃動向よりも、「歩合の色合いが弱い給与体系であること」「専門的な技術の習得や免許が必要なこと」などがベースアップをするかどうかに影響していることが明らかとなった。
「運賃が上がるので昇給を行う」という事業者に、「運賃は上がらないがドライバー確保のためにも昇給に踏み切る」という事業者、そして、「運賃が上がらないので昇給はできない」という事業者に「もともとドライバーに昇給はない」という事業者。ベースアップに対する考え方や取り組み方は、業界内でも事業者によってさまざまだ。
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