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ブログ・小山 雅敬
第228回:2023年問題と「固定残業制」の見直し
2022年5月17日
【質問】現在、割増賃金の支払い方法として「固定残業代」を導入しております。2023年の割増賃金率引き上げに向けて、今後見直すべき点があれば教えてください。
最近「2024年問題」がよく話題になりますが、前年の2023年4月から中小企業に適用される法定割増賃金率の引き上げは「2023年問題」とも呼ばれ、運送会社に大きな影響を与える法改正です。2023年4月以降、残業60時間までは割増賃金率25%以上で計算し、60時間を超えた部分は50%以上の割増賃金率で計算した残業代を支払う必要があります。
現在、「固定残業制」を導入して残業60時間超に相当する固定残業代を支払う会社では、2023年以降、固定残業代のなかに異なる割増賃金率が混在することになり、それぞれの計算根拠を示さないと未払い残業代請求などのトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
2023年4月から固定残業代の金額を割増賃金率25%で計算した部分と割増賃金率50%で計算した部分とに区分して、計算根拠を明確にすることが望ましいといえます。その場合、賃金規程に計算根拠を明示するだけではなく、労働条件通知書、または労働契約書にも区分して明示することが重要です。
さらに、従業員に毎月渡す給与明細書の備考欄にも記載しておくとよいでしょう。固定残業制は曖昧な制度のまま導入するとトラブルになりやすいので注意が必要です。
運送会社で時々見られる給与の支払い方に、「基本給を最低賃金で設定し、残りを全部固定残業代にしている」会社があり、要注意です。
最近の最高裁判例により固定残業代の金額と実際の残業時間で計算した法定の割増賃金額との間に大きな乖離がある場合、割増賃金の性格を否認される恐れがあります。
例えば、実際には月60〜70時間程度の残業時間しかないのに、固定残業代として月150時間分を支給している場合などです。「残業代に不足がなければよいだろう」と考えていた会社は、今は多すぎても否認されやすいということに注意しなければなりません。
また、固定残業制については「周知」の手続きを厳格に判断されますので、賃金規定などに明記するとともに就業規則を閲覧できる状況に保つことが重要です。
賃金債権の消滅時効がすでに延長されており、2023年4月からは実質的に過去3年間遡及されることになります。未払い残業代請求トラブルのさらなる増加が予想されるので、2023年4月以降の賃金見直しを検討しておきましょう。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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