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    大雪被害で運送業に打撃 荷主は「とにかく運べ」

    2014年2月21日

     
     
     

     14日から15日にかけて記録的な大雪に見舞われた関東甲信越地方では、至る所で交通網が遮断され、トラックが立ち往生する光景が見られた。また、水気を多く含んだ雪質が積もったことで、簡易型のテント倉庫が崩壊するという被害も相次いだ。食品輸送の現場では、大雪で立ちいかない状況の中で配送を迫る荷主に非難の声も上がっている。



     埼玉県所沢市の事業者では、事務所の隣にテント倉庫を備えているが、大雪で天井が崩壊し、中に保管してあった荷物にも一部影響が及んだ。「テント倉庫とはいえ、軽量鉄骨で造られている倉庫が、まさか雪で崩れるとは想像もしていなかった」と、同社社長は振り返る。「幸い、貨物保険をはじめ、テント倉庫の修理も保険で賄える」と、最小限の被害で抑えられたという。ただ、修理を頼むにも同様の事故が相次ぎ、テント倉庫を扱える技術者の手配が間に合わないようで、「本格的に使えるようになるのは5月になるかもしれない」と話している。

     また、同狭山市の事業者も同様に、「テント倉庫が雪の重みで倒壊した」という。「けが人がいなかったのは良かったが、損害は大きい」とこぼしている。そのほか、テント倉庫内に停めていた4?車に雪でつぶれた屋根が直撃し、今も動かせない状態という事業者もいた。

     一方、交通網が遮断され、輸送にも深刻な影響が及んだ。埼玉県加須市や茨城県鹿嶋市などに物流センターを持つサニタリー関係を扱うメーカーの物流担当者によると、「土曜日だけで、荷物を運んでも下ろせないという?持ち戻り?が合計60件発生した」という。「週明けになっても幹線輸送が関東方面には入れない状態」と困惑の様子。また、千葉市の事業者は、「相模原に行ったトラックが、千葉の本社へ戻ってくるのに20時間もかかった。ほとんど仕事にならない状況だ」とこぼす。さらに、「山梨県甲府市に行ったトラックが、3日経っても戻って来られない状況」という神奈川県内の事業者もいた。

     一方、食品輸送の現場では店頭の品ぞろえを優先するあまり、強硬に配送を迫る荷主の姿勢に事業者から非難の声が上がっている。埼玉県川越市の事業者は、「一部の大手小売業者が強硬姿勢を崩さず、道路事情も考慮することなく、『とにかく運べ』と指示を出してきた」という。大雪で道路は渋滞し、トラックが全く進まない現状を説明したが、荷主は全く聞き入れず、「とにかく現場へ向かえ」という指示が繰り返されたという。

     「確かに店頭に商品が並ばなければ消費者は困るだろうが、現場へたどり着けないのが分かっているのに、どうやって行けというのか」と話す同社長。「立ち往生して車内に閉じ込められるドライバーのことはどうでもいいと考えていることが許せない。人の命よりも自社の仕入れを優先する…こうした非常時にこそ荷主の姿勢がよくわかる」と憤慨する。

     一方、埼玉県内の別の事業者も食品輸送を手掛けているが、「通行規制で埼玉・神奈川県内で足止めを余儀なくされていた」という。「雪で激しい道路渋滞を承知の上で、荷主は配送を指示してくる」という一方で、「食品は届けなければ廃棄になるため、ロスが出てしまう。それを嫌うあまり荷主は届けたがる」と、強引な配送を命じる背景を打ち明ける。

     「消費者に食料品を届けたいという思いは、日々業務に従事している我々運送事業者も同じ。ただ、大事なドライバーを危険にさらしてまで…と考えると、躊躇するのも事実。こういった非常事態は、行政が介入するなど、対応してくれることが必要ではないか」と話している。

     
     
     
     
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