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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(195)大切な心の経営〈事例A〉
2018年5月15日
〈二代目社長の経営姿勢〉
二代目社長は国立大学を卒業後、荷主先に就職、5年経って父親の会社に入ってきた。若くして父親を補佐してきた。10年前に社長に就任し、父親は会長となった。周りは父親の代からの古参幹部で、社長といえど幹部の中では一番若い。しかし、頭はよく切れるうえ、経営数字のつかみ方も鋭い。
ところが、人望がいまだ身に付いていない。社内経営会議で古参幹部をボロクソになじる。「このくたばりぞこない」︱︱などとわめき、経営成績が上がらないことを責める。カンシャクのうえ、父親である会長ともよくケンカする。経営会議の席上で親子ゲンカが始まる。社内では社長のことを陰で「暴君」とささやきあっていた。
「あの若社長は本当にわがままだ。父親のいうことを聞きもしない。一人で偉くなったように錯覚している。自分の思い通りにならないとカンシャクを起こす。まるで暴君だ」
その上、社長は若手経営者団体の活動にも熱心である。本業に割く時間よりも多いくらいである。昼間から、そのことでよく電話が掛かり、ときには出かけていく。夜のつきあいも派手である。飲み歩くのである。しかもイベント好きである。口実をつくっては、よくパーティーを催す。芸能人を呼んで派手にやることが好きだ。その席で夢のようなことを語る。
「自分の会社を今に地域でナンバーワンにしてみせる」︱︱などと大言壮語する。大言壮語たるゆえんは、行動が伴っていないからだ。
古参幹部は若社長が中学生のころからよく知っている。内心「この若僧が何言ってるんだ」と思っても口に出せない。諫言できないのである。二代目社長は人のいうことを聞かないのである。批判厳禁である。逆らうそぶりを示すと、「文句があるなら、すぐ会社をやめろ」と通告する。心ある社員は嘆いている。
「飲み歩いたりするのもいいが、もっと現場をみて欲しい。現場の苦労を分かって欲しい。これではまるで聞き分けのない二代目のぼんぼんではないか」
そうこうするうちに会長が他界した。社長にブレーキを掛けられる唯一の人が、この世からいなくなった。まさに社長のワンマンぶりが際立ってくる。周りの幹部をイエスマンで固めていく。ライオンは自分だけで、あとはみんな小羊の集団である。
二代目社長は頭がよく、社内の最高権力者である。ところが、現場の実態を肌で把握していない。交流というものがない。一方的な関係である。分かりやすくいえば、指示命令の関係でしか現場とは関わってこなかった。ここに大きな落とし穴があった。
目立たないけれど、チョコチョコした遅刻や急な休みが増えてきた。不満がくすぶり、高まってくる。そして、ついにその日がきた。
その日とは、労働組合の結成である。上部団体に加盟し、分会として名乗りを挙げる。分会の委員長は59歳。定年まであと1年、勤続40年の超ベテラン社員である。
この記事へのコメント
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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