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ブログ・馬場 栄
第146回:今年実施される法改正(2)
2019年4月5日
前回に引き続き、今回も労働法制の大改正についてお話していきます。前回は、①年次有給休暇年5日義務化についてお話しましたが、②時間外労働の上限規制③同一労働同一賃金について今回は、お話してきます。
まず、②時間外労働の上限規制についてです。詳細については年度末に掲載しました「時間外労働の上限規制」の記事で説明しましたので、今回はおさらいとして簡単に解説します。今回の法改正では、時間外労働の上限規制について具体的な残業の上限時間が設定されます(大企業は平成31年4月、中小企業は平成32年4月から施行)。今まで残業時間については、あくまで上限基準があったのみで、守れなかったとしても罰則などのペナルティーはありませんでした。ただし、今回から法律違反時に刑事罰が科されることになります。
今回の具体的な改正ポイントについては、次の通りです。
①年間上限残業時間:原則360時間(特別条項を設けると720時間が上限)②1か月上限残業時間:45時間③特別条項の上限残業時間(特別条項は年6回が上限):単月100時間未満、2か月~6か月平均80時間以内④法律違反時の罰則:企業名公表、刑事罰あり
ただし、これらのルールについてドライバーは5年間猶予されます。それ以外の社員(倉庫作業員、運行管理者、事務員)には猶予なく原則どおりの適用となります。ドライバー以外の社員で長時間勤務している社員がいるのであれば、すぐにでも労働時間削減の対応が必要になります。また、ドライバーについても5年間の猶予があるとはいえ、その時になって急に労働時間を削減するには難しい状況であると思いますので、現時点から時間をかけて労働時間削減に向けて徐々に対策を講じていく必要があります。
次に、③同一労働同一賃金についてです。これについては直近で「同一労働同一賃金に関する最高裁判例」で記事を書いておりますので、こちらも概要のみご案内します。そもそも「同一労働同一賃金」とは、正社員と有期・短時間労働者で不合理な待遇差の禁止を行う制度です。会社は正社員と有期契約社員の働き方の差異など労働条件の違いについて合理的な理由がない限りは、待遇差を設けることができません。近年トラブルが増えており、最高裁判決なども出されるようになりました。そのため、同一労働同一賃金について法律で明確にすることが決まりました(大企業は平成32年4月、中小企業は平成33年4月から施行)。
2回にわたり、今年の労働法制の大改正についてお話してきました。直近では今年4月に改正があり、その後、毎年改正があります。その時になって急に年次有給休暇の取得や労働時間を削減するには難しい状況であると思いますので、現時点から時間を掛けて社内で年次有給休暇の確保、労働時間削減に向けて徐々に対策を講じていく必要があります。
(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)
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筆者紹介
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士
年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。 -
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