-
ブログ・馬場 栄
第147回:時間外労働の上限規制
2019年4月19日
前回、来年から新たにスタートする時間外労働の上限規制についてお話しました。前回お話しましたのは「倉庫作業員、運行管理者、事務員など運転業務を行わない社員」についてのルールであり、「ドライバー」には猶予制度があるとお話ししました。ドライバーは、平均労働時間が全業種平均に比べ1、2割長く、制度を急に適用してしまうと社会への影響が大きいとの判断で猶予制度が設けられました。ただし、あくまで猶予であり制度自体は実施することに変わりはありませんので、もれなく対応が必要となります。今回はドライバーの猶予制度についてお話をします。
ドライバーには時間外労働の上限規制について、次の猶予制度が設けられております。
①2024年(中小企業は2025年)から時間外労働の上限規制が適用②年間上限残業時間:原則960時間(=月平均80時間)以内③特別条項の上限残業時間:未定④法律違反時の罰則:企業名公表、刑事罰あり⑤将来的には一般と同様の規制適用を目指す旨の規定を設ける
現ルールでは、ドライバーの労働時間について他の業種と異なり36協定を、ある程度自由に設定することが可能です。そのため拘束時間の改善基準をもとに、比較的長めの時間を設定している会社も多く見受けられます。ただし、改正後は拘束時間の考え方とは別に月平均80時間の残業規制を受けます。そのため、改正後は現状よりは少ない残業時間数を36協定に記載する必要が出てくると考えられ、より時間外労働の上限規制を超過する可能性が高くなります。今後は「拘束時間管理」と「労働時間管理」双方を分けて明確に管理していく必要が出てきます。特にドライバーの場合、荷待ち時間も労働時間に加算されており、労働時間が長くなる傾向にあります。この荷待ち時間を荷主との交渉の中で、いかに減らしていけるかが課題になっており、労働時間の削減に成功している会社はもれなく荷待ち時間の対策を講じております。
ドライバーについても5年間の猶予があるとはいえ、確実に規制の対象になります。その時になって急に労働時間を削減するには難しい状況であると思いますので、現時点から時間を掛けて荷主との交渉など労働時間削減に向けて徐々に対策を講じていく必要があります。
(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)
-
-
-
-
筆者紹介
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士
年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。 -
「ブログ・馬場 栄」の 月別記事一覧
-
「ブログ・馬場 栄」の新着記事
-
物流メルマガ