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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(363)リーダーシップについて(4)―1
2022年1月24日
「安けれども危うきを忘れず、存すれども亡びるを忘れず、治まれども乱るるを忘れず」
この言葉は、中国の古典「易経」の一説である。物事が万事順調に行っているときにも、危急の場合、最悪の場合のことを常に考え、それに対処する備えを怠ってはならぬという戒めである。
正にリーダーたるものの心構えである。今回は倒産型のリーダーについて取り上げて反面教師としてみよう。
経営コンサルタントとして、倒産企業に関与したことはないが、相談にみえられて「これでは手伝いはできない」と引き下がって、しばらくして倒産した企業がある。
A企業は、建築関連の社員20人の造園会社である。A社の社長が私に経営計画の作成を依頼してきた。私は、実態把握のため会社訪問した。
資金繰りが苦しく、しかも月次決算はしていない。ただ資金繰りに追われている。大手の下請けをやめたため、売り上げが減少している。何故やめたかというと、大手の支払い条件が悪いからということであった。
経営数字はドンブリ勘定で、ここ5年間は、粉飾決算で無理に黒字にしている。銀行から金を借りるためと、役所関係の仕事をするために、経営実態を隠している。そのうえ、多角化ということでレストラン経営に手を出して、この部門も赤字である。ニッチもサッチもいかない状態で、コンサルティング報酬はいわば出世払いというか、良くなったら払うとのこと。これでは手伝いできないと引き下がったわけである。
しかし、いろいろとA社長と話すうちにコンサルティングはできないが、A社長の助けになるかもしれない同業のB社長を紹介するということになった。後日、A社長を連れて同業のB社長のところへ行った。A社長は経営の苦しさの原因として、大手の支払条件の悪さや、社員の働きがいまひとつということをメンメンと話し、どうか「お金を貸してほしい」と懇願した。土下座した。大の男が応接室のソファから身をのけて、床に頭をこすりつけた。
B社長は言った。「経営が悪いのを人のせいにしてはダメだ。自分が悪いのだ。破産しなさい。破産するにも金がいる。その金なら貸してあげよう。一から出直す覚悟があれば、できるはずだ」
A社長は「考えさせてほしい」といってその場は別れた。帰り道、A社長は私に言った。「芝居が通じなかったなあ。破産するぐらいなら死んだ方がマシだ。保険金も入るしね」そのまま別れたが、6か月後に夜逃げしたということを人づてに聞いた。行方不明である。
つづく
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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