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ブログ・小山 雅敬
第219回:業務中に社員が意識を失い倒れた
2021年11月16日
【質問】勤続4年のドライバーが先日、業務中に突然意識を失い、倒れて病院へ搬送されました。会社としての対応や留意点について教えてください。
庫内作業員やドライバーが勤務中に突然意識を失い、倒れて病院に搬送されることがあります。その原因は本人の持病や労働環境などさまざまですが、予期せぬ事態に慌てるのではなく、どの作業現場でも起こりうることとして普段から留意点を確認しておく必要があります。
事態が発生したら、まずは本人の救護、そして家族への連絡、入院手配など、迅速な対応に努めます。独身者の場合、両親が遠方から駆けつけることがあるので、駅からの送迎や宿泊手配なども会社で行います。業務中の事案なので、運輸支局への報告対象になる場合は、報告の手配をします。
労災の対象になるか否かは①業務遂行性と②業務起因性の両面で確認されます。①の業務遂行性は勤務中なので該当します。②の業務起因性は倒れた原因が業務にあるのか否かということです。原因が明らかに業務外の理由であれば該当しませんが、長時間労働やそのほかの労働負荷による場合は業務起因性ありと判断されます。
業務起因性については脳心臓疾患の場合、㋐異常な出来事㋑短期間の過重業務㋒長期間の過重業務の主に3つの観点で労災認定の判断がなされます。
㋐は発症の前日までに特に精神的・身体的な負荷や作業環境の変化があったか否かを見ます。直前の事故発生などです。
㋑は発症前1週間に特に過重な業務を行ったか否かを見ます。1週間の深夜労働実態などです。
㋒は発症前6か月の疲労の蓄積を見ます。深夜勤務や不規則勤務などの勤務形態、炎天下の業務や騒音などの作業環境、事故などの精神的緊張などを含みますが、最も注意すべきことは時間外労働の状況です。
月45時間超の残業から業務起因性との関連が認められ、1か月に100時間、または2〜6か月平均で月80時間超の時間外労働があれば、ほぼ業務に起因すると認定されます。拘束時間や休日の取得状況、そのほか総合評価で判断します。
日頃から長時間労働を放置し、健康診断などの健康管理を曖昧にしていると突然の事態で会社の責任を問われることになります。
なお、道交法の定めにより、診察した医師が自動車の安全な運転に支障を及ぼす一定の症状に該当すると判断し、公安委員会に対して届け出を行った場合には、免停などで本人の乗務が禁止されることがあります。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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