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ブログ・小山 雅敬
第254回:「政策パッケージ」と「ガイドライン」の押さえておくべきポイント
2023年7月21日
【質問】先日発表された「物流革新に向けた政策パッケージ」と「荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」の中で運送事業者が押さえておくべきポイントを教えてください。
本年6月2日に、政府から「物流革新に向けた政策パッケージ」が発表され、同時に経済産業省・農林水産省・国土交通省の連名で、「荷主事業者・物流事業者の取り組みに関するガイドライン」が示されました。
政策パッケージの内容は①商慣行の見直し②物流の効率化③荷主・消費者の行動変容の3つの大項目に分かれ、今後政府が法制化を含めて進める施策の内容が示されています。
その内容を見ると、2024年問題による物流の停滞を懸念した政府の本気度が強く表れています。
私は運送業の経営コンサルティングを始めてから今年で36年目になりますが、過去に運送業界に対してこれほど政府が力を入れた取り組みを見たことがありません。
政策パッケージの内容で運送事業者が抑えておくべきポイントは特に前記①と③の内容です。(②は主に政府の規制緩和や推進・助成項目等に関する内容です)
①の中では、「規制的措置等の導入(※法制化のこと)」を伴う「物流負荷の軽減(荷待ち・荷役時間の削減)」及び「多重下請け構造の是正」が重要です。実務的には「自主行動計画の作成」と「元請事業者による実運送事業者の台帳作成」を求められることになります。また荷主・元請の監視強化の項目に「トラックGメン(仮称)」の新設が盛り込まれており、実効性を確保する意図が強く見られます。さらに「標準的な運賃」の実効性が監視強化を含めて前面に打ち出されており、その位置づけがより強まった印象を受けます。
③の中では「荷主の経営者層の意識改革(規制的措置等の導入)」と「物流改善を評価・公表する仕組みの創設」が重要です。特に荷主に「物流管理統括者(役員クラス)」の選任義務を課す施策は運送現場の労働環境改善に大きい影響を与えるものと期待されます。なお具体的に取り組むべき事項は「ガイドライン」の中に記載されており、荷主及び運送事業者は本年中にガイドラインに基づいた対策を始める必要があります。ガイドラインの中では特に発荷主及び着荷主ともに荷待ち・荷役作業時間の把握義務を課し、時間短縮を促す取り組みが重要です。荷主の意識改革に強い影響を与えるものと思います。また運送事業者はより一層、適正な労働時間管理と長時間労働削減、及び多重下請構造の是正を進める必要があります
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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