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ブログ・小山 雅敬
第259回:36協定特別条項の2大義務に要注意!
2023年10月6日
【質問】2024年の法改正に伴い、次年度から運転職を対象に特別条項付きの36協定を締結する予定ですが、特別条項の適用に関して気をつけるべき点があれば教えてください。
2024年4月からドライバーにも月間45時間、年間360時間という時間外労働の原則的な上限基準が適用になり、その基準を超えて年間960時間まで時間外労働を行うためには特別条項付きの36協定を締結する必要があります。
よって来年は大半の運送会社が特別条項付きの36協定を届け出することになるでしょう。特別条項を適用する際に注意すべき重要な事項が2つあります。
それは特別条項適用の条件となる①「健康福祉確保措置」と②「特別条項を発動する際の手続き」の2大義務です。これらが実施されていない場合は特別条項自体が無効になり、原則的な上限基準である月45時間と年間360時間が時間外労働の上限になってしまいます。
前記①と②は特別条項付き36協定の様式に記載欄が設けられており、必ず記載しなければなりません。「健康福祉確保措置」は36協定様式の欄外に記載された10項目の措置内容から1つ以上を選択し、その番号と具体的な内容を記載することになります。
例えば医師による面接指導や深夜業の回数制限、代償休日、健康診断などの中から限度時間(例:月45時間)を超えた労働者に対して講ずる措置を決め、決定した項目については必ずその内容を実施する義務があります。
また実施した記録は3年間保存する必要があります。そのため、項目を選択する際には実施可能な措置を選ぶことが重要です。労働基準監督署の臨検の際に記録の提出を求められることがありますので、日常から適正に運用しておくことが重要です。
また「特別条項を発動する際の手続き」に関しては、㋐労使間の協議による方法と㋑会社からの通告による方法の2種類があり、いずれかを36協定に記載する必要があります。
例えば「来月は荷主の出荷量が増加する見込みなので月45時間の限度時間を超えて残業するドライバーが発生する見込み」など事前に労働者代表に対して通告する必要があります。時間外労働を行う社員に対する通告ではなく、労働者代表に対する通告であることに注意してください。
実際に通告したか否かを臨検の際に確認されることがありますので、なるべく文書などで記録に残すほうがいいでしょう。特別条項無効とされた実例もありますので、十分注意してください。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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