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ブログ・向井 蘭
【第53回】裁判員休暇について(1)
2011年4月4日
最近、連日のようにテレビや新聞において、裁判員制度の報道がなされております。今回から数回に分けて、裁判員制度実施にあたり、会社が留意するべき点について述べたいと思います。
裁判員制度とは、一定の刑事裁判において、国民から事件ごとに選ばれた裁判員が裁判官とともに審理に参加する裁判制度をさします。
平成16年に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(以下、「裁判員法」といいます)が制定され、その後平成21年5月21日に実施されることが予定されております。実際には平成21年7月下旬から裁判員が参加する刑事裁判が開始される予定です。
裁判員法は、第100条において「労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と定めており、裁判員等の任務に就いたこと、裁判員等の任務のために仕事を休んだことなどを理由にして、解雇などの不利益な取り扱いを禁止しております。
しかしながら、裁判員が会社を休んだ場合、有給か無給か、年次有給休暇を使用するのか、使用者が特別休暇を使用させるのかについては定めが無く、各使用者の判断に委ねられています。
労務行政研究所の調査によりますと、平成20年7~8月の調査の段階で、従業員が裁判員として会社を休む場合に備え対応を決めているかどうか尋ねたところ、「すでに決めている」と答えたのは46.5パーセント、このうち約89パーセントの企業が「休暇を与える」と回答しました。「休暇を与える」と回答した企業のうち、約70パーセントの企業が有給休暇にすると答えましたが、一方で無給とする企業も約8パーセントありました。
また、連合は、平成20年春闘において、有給の裁判員休暇に関する労働協約の締結を方針の一つとして加えましたが、連合の調べによれば、平成20年8月時点で、裁判員休暇について労働協約を締結できたのは約6パーセントにとどまったことが分かりました。企業に労働協約締結を要求した労働組合自体が10パーセント未満にとどまったことなどから、そもそもほとんどの労働組合が裁判員休暇について労働協約を締結することに取り組んでいないことが分かりました。
次回から、裁判員休暇の取扱について具体的に述べたいと思います。この記事へのコメント
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筆者紹介
向井 蘭
弁護士
労働組合問題など使用者側の労務問題を主に取り扱っている。 モットーは、企業と従業員のハッピーな関係を追及すること。 経営者側の労働問題に関するお問合せは、「労務ネット」まで。
URL:http://www.labor-management.net/ -
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