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社長さん、会社を潰したくないなら、バカみたいに現金にこだわりなさい!(柳澤賢仁・著、クロスメディア・パブリッシング)
2009年12月8日
「社長さん、会社を潰したくないなら、バカみたいに現金にこだわりなさい!」とは何だか攻撃的なタイトルだが、実は中小企業への「愛」があふれた一冊。著者は税理士の柳澤賢仁氏。「中小企業愛」をモットーに、中小企業の建て直しを支援している。表紙に「いつまでも銀行融資に頼っていてはいけません。資金繰りは、ココを直せばラクになります」とある通り、同著は資金繰りのポイントに書かれた本である。
「資金繰りが悪化すると辛い想いをするが、そこから目を背けてはいけない」
同氏は本の中で、キャッシュの最大化の方法を、「資産、負債、資本、費用、収益の5つをいじること」と説明。その上で、5つの項目をそれぞれ「キャッシュ・イン系」「キャッシュ・アウト系」に分け、合計で7つの方法が示されている。銀行融資に頼る前に「やるべきこと」がこんなにもあるのかと気づく。
「基本は、収入より支出を抑えること。売上が落ち込むと営業をがんばる社長がいるが、これは間違い。一か八かの設備投資なんてもってのほか。こういった無理をするのは、たいていお客さんのことを考えていない時であり、うまく行くはずがない」
同著では、(1)コストカット(2)現金化(3)資金調達(4)リスケジュール(支払い条件の変更)の順番で経営者がすべきことが説明されているのだが、同氏はこれまで、苦境にある経営者を何度も救ってきたという。
「普段から数字を把握していないと、支払い不能になりそうなのが分かって初めてあたふたすることになる。その時に自分が行うのは『底』を見せてあげること。不安になるのは、いくら足りないのかが分からないから。『これだけの額が足りない』というのが明確になれば、先ほど言ったように対策は7つもある。それをバカみたいにやれば良いだけのこと」
事業を「再構築」するためのこれらの取り組みを紹介する一方で、同氏は管理会計、もっと言えば「経営計画の立案」の重要性を訴える。
「企業のステージで言うと、上昇局面にある時には(管理会計について)考える必要性を感じない経営者が多いが、下降局面になるとその重要性が分かる。税理士の仕事は『過去』を見られるようにしてあげること。経営者は、自分で『未来』を見られるようにしないといけない」
そのためには、経営者自身も数字の勉強をする必要がある。「限界利益(同著参照)の考え方を知っている経営者などほとんどいない。本を読むなどして勉強し、基礎を叩き込んで欲しい」と同氏は訴える。さらに、「ブレない経営をするための企業理念が必要」とも。
「まずは企業理念が経営者と社員の頭にしみ込んでいること。その上で数字上の経営計画が立てられれば、その企業には強い軸ができる」
これらの取り組みを始めるには、不況で苦しいいまこそチャンスだ。
「いま、自殺者の3分の1が中小企業の経営者だと言われている。しかし、たとえ倒産しても死なないし、復活できる。人づきあいをする中でも感じることだが、大きな失敗をしてきた人のほうが深みがある。会社経営でも、下り幅が大きかった人ほど飛躍の幅は大きいはず。事業の建て直し、あるいは場合によっては倒産という手段を選ぶこともあるが、とにかく復活の方法を一緒に考えていきたい」
「本当は何をすべきか分かっているはずなのに、見栄がそれを邪魔している経営者もいるはず」と同氏。「バカになろう」、それが同氏からのエールだ。
▼「社長さん、会社を潰したくないなら、バカみたいに現金にこだわりなさい!」柳澤賢仁・著、クロスメディア・パブリッシング、1500円(税別)
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