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ブログ・お勧めビジネス書レビュー
社員が勝手に稼いでくれる「仕組み」(平秀信・網倉博・著、日本実業出版社)
2010年1月19日
『社員が勝手に稼いでくれる「仕組み」』というタイトルに、あなたは何を思うだろうか。「そんな夢のようなこと」と思うのか、それとも「稼ぐのは経営者の自分だ」という反発心か。
著者のひとりである網倉博氏は、同著について「経営者と社員の間に流れる天の川に、橋をかけようという思いで書いた本」と説明する。そして、「世の中の社長さんが『社員にもっと働いて欲しい』、あるいは『もっと成長して欲しい』と思ってやっているほとんどの行動が、私には嫌われるためにやっているようにしか見えない」と苦言を呈す。
「『社員を育てたい』という一心で、怒ったり、セミナーに行かせたり、給料を上げたり。でも、思うように社員は動いてくれず、『裏切られた』という思いばかりが募る。駆け落ちをしようとする娘に『絶対に行くな』と叱る口調で言えば、反発でさらに決意を強固なものにしてしまうのと同じ。こんなことを繰り返していたら、社長さんの血圧が上がってしまう」
同著では、「リーダーシップ」を「(従業員に)活躍の場を与えること」と定義している。活躍の場を与えることで、「自分一人の力で稼げる(同著では「エサのとり方」と表現)社員」に育てよう―というのが同著の主旨だ。
そして、「現場に逃げるな」「努力に逃げるな」とし、社長が現場作業で汗を流すことを禁止する。本来、社長の仕事ではない現場作業に従事することで、「社長が仕事をした気になってしまう」危険性とともに、「社員の活躍の場を奪ってしまう」ことに対する警告も与えている。
「あれこれ手間をかけてあげても、その社員が70、80歳になる頃も見てあげられるのかと。そうではないのだから、社長が心がけるべきは社員の邪魔をせず、放っておくこと」
これを実現するための具体的な道筋として、「泳がす」「お世辞&決断させる」「叱る」「ほめる」「認めて励ます」の心理的な5段階のステップを紹介。同氏は、まずやるべきこととして「社員の給料を下げること」を挙げる。
「社員の活躍に見合った額に落とすこと。働きに納得の行かない社員がいても、給料を下げて『この額のレベル』と考えれば活躍も評価できるはず。一方で、社員も評価されることで成功体験を積むことができる。大きな成功は小さな成功の積み重ね。小さくても良いから、判断や決断の機会をたくさん与えること。苦しい時に『自分の給料の額を下げよう』と考える社長さんが多いが、私から見ればそれは間違い」
「自分で稼げる」ようになったら、せっかく育てたのに他所へ行ってしまうのではないか―という不安もあるが。
「そうならないためには、社長は会社の『未来』を見せること。社員は自分が『活躍したい』と思える場があればがんばれる。社長が語るのは遠い先の未来、そして『できないこと』のほうが良い。IBMが昔から『一人1台パソコンを持つ時代が来る』と言って来てそれを実現したように、ハッタリでも良い。また、たとえ社員が独立して外に出てしまっても、お互いの信頼が構築されていればそれは裏切りではなく、パートナーとして関係を築くことで、逆に新たなビジネスチャンスにつながることもあるはず」
いまはコンサルタントとして活躍する平氏、網倉氏だが、ともに長年のサラリーマン経験を持つため、「社長」と「社員」、双方の幸せの実現をめざすための内容になっている。
「この著に込めたのは、日本が元気になって欲しいという思い。社長が元気になれば、社員が、その妻が子が、そして飼っている犬までもが元気になれる。いまは努力が空回りしてしまっている社長さんが多いように思うので、きちんと『成果の上がる』やり方を知って欲しい」
▼『社員が勝手に稼いでくれる「仕組み」』、平秀信・網倉博・著、日本実業出版社、1500円(税別)
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