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ブログ・高橋 聡
第205回:令和時代の運送業経営 コミュニケーション編(4)
2021年9月6日
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウィルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今回も前号に続き労務管理上重要なドライバーとの「コミュニケーション」について説明してまいります。
1.就業規則など文書類の限界、過信するリスク
⑴就業規則の限界
私は社会保険労務士として業務を行っていますので、就業規則は大変重要だと考えています。法改正も頻繁に行われていますし、労務トラブルに関しては、社員の権利意識の変化、SNSの進展や個人情報保護などの概念が浸透しているため、トラブルも多様化、複雑化しており、常に最新の法令に対応し、規程類をアップデートしていくことが重要です。一方でリスクを想定し、文書に記載することには「限界」があるとも感じています。就業規則のなかで会社のルールを細かく記載できるのは「服務規律」ですので、できるだけ多くの事を想定し、きめ細かくルール作りを行うことは大切です。
しかしながら、想定する事態、リスクには限度があり、また実際に発生するトラブルは「状況」「前提」「経緯」などが複雑化していて「服務規律」の文言では対応が出来ないという事態も起こり得ます。
就業規則類は「文書」で規定するわけですが、実際に発生する事案には経営者や社員の「感情」が入り込みますので、全ての労務対策が就業規則で対応できるわけではない、就業規則は万能ではないと感じています。
会社と社員との権利義務関係を文書化しているものではありますが、いい就業規則を整備している会社がいい会社とは限りません。
例えば、有給休暇や特別休暇に関し、さまざまな質問が寄せられます。就業規則に関する質問や相談の多い会社、就業規則の文言に拘りのある会社はトラブルが多い会社が多いのです。
例えば、事務員のAさんは自身の権利ばかり主張し自身の都合で休暇を請求してくるので、何とか対策を取りたい、だから就業規則の文言を休暇の請求を拒否できるよう変えたい、というような相談です。
就業規則は万能ではありません。そもそも、就業規則の相談の多い会社は果たして良い会社でしょうか。最新の法令に準拠した「強い」就業規則を整備することは「経営の最低条件」です。そのうえで、実際に発生する労務トラブルに対しては、なによりも「コミュニケーション」が重要であり、大切だと考えます。
2.コミュニケーションの本質
シリーズでコミュニケーションの重要性について説明してまいりました。コミュニケーションは、就業規則を整備する前提で必ず必要なものであり、その本質は会社と社員との「信頼関係」であると考えます。経営環境はコロナ禍で常に変化しています。同一労働同一賃金の問題や時間外時間規制の強化などの改正も相次いで実施されています。今一度、社員とのコミュニケーションを見直し、変化に耐えうる経営体質を目指していくことをお勧めします。 -
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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