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物流ニュース
飲酒運転の根絶へ アルコール・インターロックの活用も
2021年10月20日
飲酒運転による痛ましい事故が後を絶たない。警察庁によると、飲酒運転による死亡事故が昨年1年間で159件発生したという。平成23年、国交省により貨物自動車運送業において飲酒運転防止のため、乗務前乗務後の点呼時にアルコール検知器を使用することが義務付けられた。さらに、今年6月に千葉県八街市で小学生5人が飲酒運転の大型トラックにはねられ死傷した事故を受け、警察庁は9月2日、「白ナンバー」の事業者に対し、アルコール検知器によるドライバーの飲酒検査を義務付ける道交法施行規則の改正案をまとめた。来年4月施行を目指している。こうしたアルコール検知器の普及拡大が進む一方で、「アルコール・インターロック装置」の活用による飲酒運転の撲滅に取り組む動きもある。
飲酒運転による交通事故は、平成18年8月に福岡県で幼児3人が死亡する重大事故が発生するなど大きな社会問題となった。その後、19年の飲酒運転厳罰化、21年の行政処分強化などにより、飲酒運転による交通事故は年々減少してきたが、近年では下げ止まり傾向にある。そのため全ト協でも9月6日付で、「飲酒運転根絶に向けたトラック運送業界の取り組みの強化について」を決議するなど、業界を挙げて効果的な取り組みの展開を図っている。
「アルコール・インターロック装置」とは、エンジン始動時、ドライバーの呼気中のアルコール濃度を計測し、規定値を超える場合には始動できないようにする装置のこと。
全ト協では、事業用トラックの交通事故ゼロを目指すため、令和3年度安全装置等導入促進助成事業を実施しており、その中で「飲酒運転を防止するアルコール・インターロック装置」を助成対象に入れている。対象装置ごとに機器取得価格の2分の1、上限2万円が助成される。
国交省でもアルコール・インターロック装置の実用化に向けた取り組みを進めており、これまで「アルコール・インターロック装置に関する検討会」が開かれ、平成19年には最終取りまとめを発表。さらに、24年には「呼気吹込み式アルコール・インターロック装置の技術指針」を策定したが、現在、これといった動きはない。国交省の自動車局技術環境政策課に話を聞くと、「アルコール・インターロックについては現在、ASV(先進安全自動車)補助金の対象装置に加えるかどうかを検討しているところ」と説明する。
Futajima Logi(田上圭一社長=写真左、大阪市住之江区)では約10年前から、車両購入の際にアルコール・インターロック装置を導入している。
田上社長は、「白ナンバーもアルコール検知器義務化へという報道があったが、それがゴールではないと思う。管理には限界があり、義務化だけでは防げないのではないか」と指摘する。また、飲酒運転による事故について、「真面目に取り組んでいる我々の業界がどんどん厳しくなっていき、グレーなところが潤っている。実際、最近人気の出前・宅配サービスなど事故が多いではないか」と現状を疑問視する。
「管理・監督している人が悪いとなっても、根本的な解決にはならない。近い将来、痛ましい事故がまた起きるかもしれない」と危惧する同社長。「インターロックを活用することで、起こりうる事故を未然に防ぐことができる。飲酒運転を『しない、させない』から『しない、させない、できない』へもっていける。会社やドライバーを、そして一般人を守るためにも、装備面でのサポートをしてもらえれば」と、将来的なインターロックの全車両への標準化や普及拡大へ向けて充実した助成金制度などを求める。
「道路上の安全を業界だけに押し付けるのではなく、みんなで考える機会にしてもらいたい。『他人事』ではなく『自分事』として考えてもらいたい。被害者を守るのはもちろんのこと、加害者を作らないように、そして会社や社員を守るためにも、理解と協力を求める」と強く訴える。
◎関連リンク→ 株式会社Futajima Logi
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