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    個人経営 煩雑な相続手続き、既得権失う場合も

    2011年6月9日

     
     
     

     トラック事業者の零細化が顕著だ。事業免許から許可制へと姿を変えた約20年前には20台を超えていた1事業者当たりの平均保有台数は、ここ数年の大幅な減車も影響して同15台を割り込むレベルといわれるが、新規参入組の大半が最小規模のトラック5台であることを踏まえれば当然の成り行きだろう。
     一方、古い事業者に多い「個人経営」だが、平成18年に施行した会社法によって最低資本金の規制を受けることなく株式会社が設立できるようになったものの、いまも各地で産声を上げている。個人経営のメリットを口にする関係者もいるが、半面、許可(免許)の対象者である個人(代表者)が死亡した場合に煩雑な手続きが待ち受け、場合によっては既得権を失うケースも見られる。


     各種の都道府県別データで平均値を示すことが多い岡山県だが、岡ト協には現在、50を超える個人経営の会員(霊柩除く)が在籍する。事務局によれば「近年は譲渡・譲受によって法人化する例も増えているが、一方では新規参入も途絶えていない」と話す。岡ト協会員に占める個人経営の割合は4%程度だが、個人事業主が70会員(同)を上回る隣接の広ト協でもほぼ同じ割合になっている。
     数年前に個人経営で営業ナンバーを取得したオーナーの一人は、「(トラックの)持ち込みでやっていた運送会社から残りの車両を譲り受けて独立した格好で、自分の管理するトラックが増えただけのこと」という。「最低台数(5台)は守っているが、ドライバーは自分を含めて3人。数合わせのために抱えている2台の2t車は使っていないが、乗用車と比べたら税金は知れている」と話す個人事業主もいる。
     また、創業者の父親が戦前から手掛けていた個人経営のトラック事業を引き継いだ代表者は、「台数規制は地域性を踏まえるべき。いまは2台でやっているが、ウチのような田舎では適正な台数だと思う」と話す。初代が急逝したことで昭和30年代の前半、「60日以内に手続きしないといけないことも知らなかった」という個人免許(当時)を相続して半世紀が過ぎた。
     前出のオーナーが相続した当時は免許時代で、まだ法令試験なども必要なかったが、近年は事情も変わっている。代表者が亡くなったことで煩雑な手続きに加え、法令試験の受験に迫られた老舗の個人事業者もある。なかには相続によって、更新制が敷かれる前の「一生もの」と呼ばれてきた緩和車両に関する貴重な既得権を失わざるを得なくなったケースも見られる。
     中国運輸局の担当官は「許可(免許)が個人に与えられている場合でも一般的な譲渡・譲受は可能だが、その個人が亡くなった後となると話は別。一定期間内に相続による事業継続の認可を受けないといけないし、いきなり法人などへの譲渡・譲受はできない。いったん相続し、その先の手続きになる」と説明。
     事業を相続するには60日以内に継続認可を受けるのが建前だが、「その間に申請があればいい」というのが行政のスタンス。相続でも法令試験をクリアしなければならず、そのための柔軟な対応かもしれないが、「実施は毎月1回。ただ、1日に3度まで受験でき、ほとんどがパスしている」(前出の担当官)。
     ちなみに、この1年間(平成22年4月─同23年3月)の同局管内における個人事業主の新規許可の最多は岡山県の6件で、広島4件、山口と鳥取が各1件。相続で個人経営を継続するための認可は島根が2件、広島が1件。一方、個人経営を法人化するために譲渡・譲受を申請する例も増えており、同期間中では鳥取の7件を筆頭に広島5件、島根2件、山口1件となっている。

     
     
     
     

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