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物流ニュース
事業継承のリスクヘッジに 遺言書作成の勧め
2019年4月23日
ドライバーの高齢化が問題視されている物流業界だが、代表者の高齢化から事業承継を控えている企業も一定数ある。運送企業に限らず、かつ中小規模の企業などでは株式の大半を代表者が持ち、自然と代表者の身内が社長職と共にそれを承継しがちだが、事前準備なしの事業承継にはリスクも存在する。今回は事業承継におけるリスクヘッジを見据えた遺言書作成について専門家に話を聞いた。
よつば総合法律相談事務所(大澤一郎代表、千葉県柏市)の事業承継チームに所属する弁護士の渡邉優氏は「現在、事業承継を含む相続で裁判に発展している事件は総資産5000万円以下の規模が多い」と話す。
同氏によれば、株式をはじめとした会社に関する財産の配分をめぐりトラブルとなる事例が後を絶たないという。相続人が2人以上いた場合、例え当人にその気がなかったとしても、当人の身内、社内の別の人間、取引先などから担ぎ上げられてしまうケースがあるという。
同氏は「代表者に離婚暦がある場合など、後から相続人が見つかったケースもある。代表者がすでに社長職を譲って会長になっている場合でも、会長が株式を持ったままであれば、株式の配分によっては新たな代表者を決めるトラブルが生まれる可能性もある。遺言書で株式を遺す相続人を指名しておけば、リスクを回避できる可能性が高まる」と指摘する。
同氏は簡単に作成できる遺言書として自筆証書遺言書をあげる。本人の自筆で、氏名・作成年月日・印鑑さえあれば、どの紙に書いても有効で、印鑑は認印でも可能。こうした簡単な証書でも「A氏に会社の一切の株式を譲渡する」といった一文などを記しておけば事業承継におけるリスクを削減することができる。同氏は「事業承継の第一歩として簡単な遺言書の作成を提案したい。遺言書は作り直しが可能で、新しい日付のものが優先される」と話す。なお、自筆の遺言書は2020年7月10日から法務局へ保管申請が可能になり、活用が期待される。
また公正証書役場へ保管され、作成のサポートを受けられるタイプもある。公正証書遺言書がこれにあたる。公正証書役場へ向かうか、別途料金を払い公証人に出張を要請する必要はあるが、専門家が要望に沿った文面を作成してくれる上、公正役場に保管されるので真正性も高く、よりリスクも少ない。
さらに、同氏は遺言書の作成と併せて会社の財務状況の確認を勧めている。
同氏は「遺言書で個人の財産と会社の財産が混同されるトラブルは多い。また、借金や保証人の有無も遺言書の作成・財産の分配の際には重要性が高く、これら経営に関わる要素を確認した上での遺言書を作製することが確実なリスクヘッジへとつながる。新しい作成日が優先される遺言書だからこそ、定期的な見直しを勧めたい」とし、併せて「社長は何でもできる人がなりがちで、自分の死後を意識する機会は少ないかもしれない。しかし、早期に遺言書を作製することで、後継者を印象付けることにもつながり、会社の見直しも、後継者に企業の中身を見せる機会になる。適時会社の健康診断をするような意識で遺言書も作りなおしてはいかがか」と話す。
◎関連リンク→ よつば総合法律相談事務所
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