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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(293)人材育成について(8)A社の事例(3)

    2020年6月15日

     
     
     

     結局、B課長は工場を辞めずに踏みとどまった。奥さんの訴えがきいたわけである。B課長の仕事に対する家族(妻)の感謝の気持ちが通じた。そればかりか、B課長は一皮むけた。人間としてのスケールが一回り大きくなった。

     

     B課長の変身のきっかけを、工場長から私は聞いた。「なるほど、変身のきっかけは家族への愛か」と納得した。人材育成のキメ手の一つとして家族がある。B課長の場合でも、奥さんが「なるようになるさ」と知らんふりしていたら、おそらくB課長は辞めていただろう。そして、どこかの町工場で無気力な職人としてコツコツ働いているかもしれない。

     企業研修をいくら徹底しても、やる気を出すという面では、家庭の思い、愛情の深さの方が迫力がある。人材育成は職場風土だけではなく、家庭の力も必要である。B課長は、しみじみと私に語ってくれた。

     B課長「あの時、私は本当に辞めるつもりでした。若い女性にバカにされたように感じて、自分の感情を抑えることができませんでした。自分が愚かでした。嫁はんの涙を見て〝自分のわがままばかりいってはいけない〟と、頭にガツンと衝撃を受けました。それに、どんなことがあっても私についてきてくれると言ってくれた時は、胸がジーンとしました。家族のために頑張らねばと、心から思いました」

     人材育成のキメ手は、本人のやる気である。どんな名コーチがいても、あるいはすばらしい環境があっても、本人がその気になることが必要である。したがって、家族の果たす役割は、大きい。家の中がめちゃくちゃで、不信がうずまいて、心から頼りにされていないとしたら、その家の「お父さん」や「息子」「娘」が生き生きと仕事にチャレンジしていくだろうか。人は自分だけという孤立の中で、成長していこうとするだろうか。やはり愛する人から頼りにされ、自分が頑張らねばと、励まされる家族がいてこそ、やる気が育まれ持続していくのだ。

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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