今月に決算を迎える社長が、「このまま決算をせずに会社を閉めようか」と悩んでいます。

　今から１０年以上前に始めた商売は順調に業績を伸ばし、５年後に法人を設立しました。途中、貸し倒れで大損をしたことがありましたが、何とかこのピンチも切り抜け経営は安定していました。会社が存続できたのは、利益をしっかり、がめつく取ることや、値引きしなかったこと、お金に対する執着心が強かったことだと言います。

　今期も前半は大きな仕事が何件か続き、業績はよかったので決算は大変だろうと思っていました。好調続きだったので、つい、もっと強気で攻めよう、稼いでやろうと欲を出し、金融機関から運転資金として融資を受けました。しかし、会社のために使わずに、株式投資や為替相場の投機にまわしました。

　最初は株も為替相場も順調で、ネットで情報を見るのが楽しくて仕方なかったそうです。世間は世界同時不況に苦しんでいる最中のことでした。

　しかし、いい事は続かず、３月以降から株も為替相場も大暴落し、大損をしてしまいました。

　さらに、追い討ちをかけるかのように、仕事の注文が止まりました。投資や投機の失敗を取り返そうにも、仕事がないので大変です。仕事についてはこれから先、回復の兆しが全く見えない、といいます。

　社長は会社を閉めることを真剣に考えています。全てが順調でお金に欲を出しすぎたことを反省しているのでしょうか。自分のことを、「あほや」と呟いていました。