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無駄が強みに変わる 交渉にも余裕生まれる
2012年10月31日
「入るを量りて、出ずるを制す」。運賃水準が下がる一方で、燃料や車両などのコストが上がっているトラック業界。いかにコストを抑えられるかは、会社の存続を考える上でも重要な対策となっている。無駄を省き効率を上げる。トラック業界でも無駄を省くことは大事なことだ。しかし、無駄と思えることが、いざというときに会社の強みになることもある。
埼玉県の事業者はかつて、景気が上向かない中で余剰なトラックが出てきていた。維持するだけでも経費が掛かるので、毎日遊んでいるトラックは無駄以外の何ものでもなかった。社長は処分を考えたが、従業員から「自由に動けるトラックは必要」との意見もあり、処分を思いとどまっていた。その後、徐々に荷物が動くようになった。同業他社は無駄なトラックを処分していたため、突発的に出た仕事を受けられずに、荷主が困るという事態になっていた。
同社は、いつでも動けるように余剰トラックを抱えている。荷主は、突発的な仕事を自ずと同社に依頼してくるようになった。その結果、突発的な仕事だけでなく、チャーターの仕事も依頼されるようになった。「運送会社の経営者にとって、トラックを遊ばすことは無駄なことだが、その無駄が荷主の新規開拓につながった。会社には必要な無駄もあるのだということを学んだ」と話している。
一方、東京都の事業者は、各種ディーラーに対し値切ることをしない。そのため、近隣の同業他社よりも高い支払いをしているという。そこには同社社長なりの考えがある。
「雑巾を絞って利益を上げるというやり方が主流だが、それは大手のやること。我々零細企業は、ある程度無駄を抱えていないと、いざという時に立ちいかなくなる」と指摘する。「まだコストを下げられる」という環境にいると、気持ちに余裕ができる。当然、無駄を許容するための適正な運賃を収受することが前提だが、交渉にも余裕ができるのだという。ディーラーにとっても、値切らない同社はありがたい存在になる。そのため、ディーラーからさまざまな情報が入ってくるという。
「現状で無駄を省けば利益はさらに出るが、それよりも取引先など周囲との関係を大事にした方がいい。無理な利益を追求しないで、やりくりできる範囲でやればいい」と話している。(高田直樹)
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