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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(132)経営改革実践シリーズ(7)

    2016年11月11日

     
     
     

     〈生き残り作戦〉



     運送業界は中小企業が主力で、いわゆる小規模、労働集約型である。A社の現状からはひしひしと苦しい状況が伝わってくる。乗務員が休んだ時は社長自らハンドルを握っている。深夜2時、3時にスタートする乗業員もいる。ハードな日々、それでも営業的に赤字だ。決して経費が高いわけではない。事務所には配車係は1人しかいない。ほぼ全員が戦闘体制で、ハンドルを握っている。A社に生き残る道はあるのか。「このまま事業を続けていいのだろうか。?働けど働けどわが暮らし楽にならざりけり、じっと手をみる?の心境ですよ。どうしたらいいでしょうか」

     (a)乗務員の意識改革

     勤続5年以上の乗務員は現状にドップリとつかっている。意欲がない。ヌルマ湯状態である。生活態度に締まりがない者もいる。パチンコにのめりこんだり、酒に浸かっているのもいる。前借りも多い。「このままでいい」と現状に埋没している。こうした乗務員の意識改革が必要である。それにはトップ自らが変わることである。
     「社長は一人ひとりの乗務員に経営の現状を説明していますか」「そんなことはしていません。苦しい、苦しいとはいっていますが、いつものことなので聞き流していると思いますよ」
     そこで、「情報公開」に踏み切ることにした。情報公開とは、一人ひとりの個人別損益を明らかにして、かつ会社の赤字の現状を説明すること。給与明細表に個人別損益の数字を同封し、一人ひとり個人面談を開始した。乗務員の反応はさまざまである。
     「社長、もっとしっかりして仕事をとって来て下さい。仕事があったら喜んでしますよ」「急に赤字といわれても、僕には関係ありません。僕の給料はそんな高くないです」「会社はこのままだとつぶれるんですか。つぶれたら仕方ないですよ。またよそに行きます」
     赤字の原因の一つは、稼働率の悪さにある。月間の平均稼働日数は22日である。乗務員には月1、2日休む者もいる。そこで、経営の情報公開に踏まえて、次のことを協力要請した。

     (b)ローテーションの実施

     冷凍輸送のグループと一般輸送のグループには垣根がある。この垣根を取り払い、それぞれの乗務員が仕事の流動性に応じてローテーションしていく。自車を休車させて傭車するといったことではムダが多い。要するに、乗務員がどの車でも乗務できるようにすることである。
     そのためには、それぞれの仕事を覚えなくてはならない。「そんなことはイヤだ」と言い張る乗務員もいた。社長は粘り強く説得した。その1人は、2?車に乗っている勤続20年の最古参ドライバー。月の売り上げ45万円に対して人件費は30万円で、人件費率は66・7%。独身で50歳。会社の社宅というか寮に住んでいる。部屋はゴミの山で、ゴミの中で寝起きしている。
     「このままでは君の仕事はなくなるよ。せっかく大型免許も持っているのだし、がんばってくれよ」「社長、この年になって無理はしたくないのです。楽して生きたいのです…」 
    (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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