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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(182)後継者をどうする〈事例A〉
2018年1月12日
〈運命は巡る〉
A社は30年前に経営不振に直面した。その当時、車両数は20台ばかり。創業者社長は経営を任せられる人材として外部からB氏を採用した。
B氏は、経営のピンチに見舞われている会社に乗り込んで経営を立て直すといったことを得意としていた。いわば、経営再建を専門とする経営コンサルタントである。B氏50歳、創業者社長60歳、創業者社長の長男は40歳だった。
この長男はドライバーとしてA社で働いていた。B氏は創業者社長を補佐し、経営のピンチを乗り切ってきた。B氏が入社して10年経つと、創業者社長が急死、2代目として長男が社長に就任した。2代目は当時50歳、ドライバーの仕事を徐々に離れ、配車係をしていた。
配車係といっても、いつも机と電話にへばりついているわけではない。急な休みの乗務員との交代とか、急ぎの仕事が入ると、ハンドルを握っていた。
資本金1000万円は全て創業者の所有であり、創業者の死によって2代目が一挙に株と経営権を相続することになったわけである。いわゆる「経営再建請負人」として入ったB氏は、引き続き専務として2代目を補佐することになった。2代目の長男は当時30歳。
運命は巡るというが、またA社に経営のピンチが襲ってきた。2代目が就任して10年、B氏が入社してから20年目。今回のピンチの主因は2代目にある。2代目が、自らの友人の経営者の借金について連帯保証人となっていて、その友人の会社が倒産した。連帯保証人になることについては、B氏には内緒にしていた。反対されることが分かっていたからである。
2代目は経営者になっても相変わらずのパターンである。配車係が彼の仕事である。経営の実務、とりわけ資金繰りはB氏の領分である。B氏に黙って会社の実印を押したわけである。襲いかかる負担はハンパではない。その額2億円。
2代目は若手経営者の集まりにも入っていて、こちらの活動もする。本業である配車係より熱が入っている。実態はアソビである。このアソビの流れで連帯保証人になったわけである。
B氏は創業者に請われて入社して、経営実務を今までこなしてきた。20年、年齢も70歳になる。B氏の気持ちとしては、そろそろ引退して2代目に引き継ぎたいと思っていた。世間では老人の年だ。その矢先の経営のピンチである。
20台だったトラックも今では50台に増え、中堅運送会社へと業容を拡大している。 (つづく)
この記事へのコメント
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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