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発想の視点力(三谷宏治・著、日本実業出版社)
2010年1月12日
仕事を増やすためには、荷主に新しい提案を行ったり、新規事業を始めたりする必要がある。そのために本や新聞を読み、人に教えを乞うなどして情報を収集する。新規事業が成功した事業者の存在も目にし、「さあ、自分も」と意気込む。しかし、いざ自社のことを考えると、「何をすれば良いのか」と迷う―。そんな経験はないだろうか。
必要なのは「発想する力」。その力の養い方を教えてくれるのが、K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院主任教授の三谷宏治氏の著書『発想の視点力』だ。同氏はボストンコンサルティンググループ、アクセンチュアと名だたる企業で戦略コンサルタントとして活躍してきた経歴を持ち、そこで培われた「思考の技術」が分かりやすく紹介されている。
その手法とは、物事を「比べる」、「ハカる」、「空間で観る」の3つ。たとえば「比べる」であれば、「常識」や「当たり前」、「なあなあ」になっていることをきちんと数字を用いて比較することが、新たなビジネスの芽可能性を見つけることにつながる―という。
「たとえば、ひとくちに新規事業と言っても、『その会社の新規事業とは何か』ということから始めなくてはならない。ノーベル賞級の事業は思いつくはずもないし、あまりに身近すぎるものは他社がもうやっている。だから、その中間を狙う必要がある。どこのゾーンを狙うのかを決め、自分たちができることをうまく見つけること。いまや無から有を生み出すのは困難だから、ネタ帳でも作ってアイデアの種をどんどん集めるといい。ドイツの誰かが始めた事業を真似れば、世界では2番目でも『日本初』にはなれる。数あるネタの中から『正しく選んで、つなぎ合わせる』という作業こそが重要」
同著では「比べる」時の視点として、「『例外』と比べて差を探る」ということが示されている。データサンプルから得られた相関関係を離れた「例外」を無視せず、むしろそこを深く探究することから本質が見えてくるという。
「例外的なことをやって成功している会社を見つけて、『(その事業の)2社目になってやろう』でも良い」
現在、不景気に悩まされる経営者が多いが、同氏は「これは日本人の特徴とも言えるが、座って悩んでいる人が多すぎる」と嘆く。実地調査などを重視した「現場感」のあるコンサルを行ってきた同氏からの「苦言」だ。
「『比べる』にしても『ハカる』にしても、まずはその対象を見つけるために行動を起こさなければいけない。たとえば、物流ウィークリーで何か面白いことをやっている同業者を見つけたら、すぐに電話をかけて聞いてみれば良い。聞かれた側も、教えを乞われて嫌な気分はしないはず。それなのに、『どうせ断られるだろう』と先回りして考え、何も行動を起こさない人が多い。まず行動し、悩んだら『ハカる』。そしてまた悩むまで行動する。基本的にはこの繰り返し」
根底にあるのは「本質を見よう」という姿勢だ。物事に対して「本当にそうなのか」、「なぜそうなのか」という問いを持つことが本質の見極めにつながり、ひいては新しいアイデアの源となる。
「何か面白いものを見つけても『なるほど!』で終わってはもったいない。世の中、『これが答えだ』で終わるほど物事は浅くないはず。『なぜ?』、『他はどうか』と考えること。トヨタの有名な『なぜを5回くり返す』は、企業全体でその考えを定着させている素晴らしい例だと思う」
人口も経済も縮小傾向にあるなか、同氏は、「生き残るためには、以前にも増して『ジャンプのある発想』が必要な時代になってきている」と分析する。
「面白いものを見つけて、それを新たな発想につなげられる力をぜひ身につけていただきたい」
▼「発想の視点力」、三谷宏治・著、日本実業出版社、1575円(税別)
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