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儲かる会社に変わる「バランスシート革命」(柴山政行・著、光文社)
2010年1月26日
公認会計士の柴山政行氏の『儲かる会社に変わる「バランスシート革命」』は、「財務諸表を経営改善に役立てよう」というのがコンセプト。「会社が傾く原因は売上不振にあるのではない、財務管理が分かっていないことが理由である」というのが同氏の理論だ。
そんな同氏は「危ない兆候に気づいた時の行動」こそが会社の運命を左右すると説く。
「会社の調子が良い時は、今までのやり方でやっていけるため何も手を打つ必要はない。しかし、『危ない兆候』が見えた時は、早いうちに新しいチャレンジをする必要がある。そうしないと、3–5年後の結果は必ず悪いものになる。『気がついたら売上ゼロ』ということにもなりかねない」
これは、同氏の実体験に基づく言葉だという。センチュリー監査法人(現・新日本監査法人)から独立し、個人会計事務所を設立。会計士としての収入に加え、専門学校で教壇に立つことで得られる講師収入が売上の2本柱だった。しかし、年間1000万円を超えていたという講師収入がある年、約680万円に激減した。
「講師収入が600万円でも生活に困ることはなかったが、『これは危ない』と思った」
既存の仕事にしがみつくのではなく、売上の減少を「転機」と捉えて、新しい取り組みにチャレンジすることを決めた同氏。2004年にメールマガジンの発行を開始。当時、「会計系」で人気を博しているメルマガはまだなかったそうで、同氏のメルマガはすぐに人気を獲得していく。
「講師収入が減り、会計士の業務に専念することも考えたが、自分は『教える』のが好き。だから、得意分野で勝負しよう、まずはナンバーワンのメルマガに育てようと決めた」
わずか1年の間で3万人の読者を獲得。これが確かな「マーケット」、そして「ブランディング」となり、セミナーや教材の売上で、いまでは講師をしていた時代を大きく上回る売上を得られるようになったという。この10月には、さらなる新展開として、中国にも進出。「講師収入を見切っ」て、収益構造を大胆に変えたからこそ、大きな売上につながった好例と言える。なお、「質の悪い売上を整理する勇気」は、同著のなかでも訴えられている。
次に大切になってくるのが、「新しい挑戦」だ。同氏の場合は「メルマガ」であったが。
「自分の経験にしても、会計士として企業経営を見ていても思うことだが、(取引先)1社に依存するのは危険なこと。昔の成功体験にすがらず、新しい展開ができるよう、常によその業界にもアンテナを張っておかないと。ビジネスの種はいろんなところに転がっている。それを見つけるために、感度の高い若い社員にプロジェクトを組ませるのも良いだろう。また、新しいことを始める際は、『絶対に成功する』なんてことはないのだから、失敗することを前提に、少ない投資でできることを探すのが重要。その点、メルマガはローコストで始められるのが良かった。そして、新しいことを始める『勇気』、これがいちばん大事」
同著で説明されている、バランスシートを活用した財務分析は、「危ない兆候」をかぎわけ、そして「改善」への具体的なプロセスを踏むのに役立つ。数字の話だけでなく、実際に「改善業務」に取り組むことになる現場の人間の心理にまで踏み込んだ内容であることが特徴で、管理者にとって非常にためになる一冊だ。
最後に、同氏が挙げる「危ない兆候」を感じるための方法を紹介しよう。それは、「各営業所・各倉庫に『クレーマー』や『間違い電話』のフリをして電話をかけること」。
「電話に出た人の応対でモラルが分かる。応対が悪ければ、その拠点は間違いなくモラルが低下しており、改善できる部分が見つかるはず」
▼『儲かる会社に変わる「バランスシート革命」』柴山政行・著、光文社、1400円(税別)
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