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    運送業の事業承継〝引退〟考える時期

    2015年1月5日

     
     
     

     中小企業のオーナーの中には、〝生涯現役〟という社長も少なくないが、それでも、いつかは身を引く時、引かなければならない時はやってくる。年齢を重ね、若い頃に比べて体力や精神力の衰えが目立ち始める。「余生を考えると、どうしても攻めの経営ができなくなり、考えが保守的になる」――。65歳という定年齢に差し掛かかった運送会社社長は現在、自身の引き際を模索している。
     「60歳を過ぎた頃から、自分の引退や事業承継について考えるようになった」と話す首都圏の運送会社社長。今年66歳を迎えるという同社長は現在、引退する時期を図りながら、これからの身の振り方と第二の人生を考えているという。同社長は、事業承継を考え始めたときから適任者を選定し、育成を図ってきた。そのため、「血縁ではないが十分に任せられる人材ができた」と自負するように、時間をかけて育成した結果、次期後継者の目星は付いた。徐々にではあるが、自分が動かなくても会社が回るようになってきたという。


     同社長が引退を視野に入れ出したのは60歳を過ぎてからだが、そのきっかけは荷主との関係だった。それまでは「まだまだ先頭に立ってやっていける」と元気満々だったという同社長だが、取引先荷主の担当者が定年で引退していくのを目の当たりにして、自身の将来を考えるようになったという。「荷主といっても、もう何十年も一緒にやってきた旧知の間柄だった」。同社長よりも少し年長で、いつもお世話になっていたという。
     そうした同世代の担当者が定年を迎え、会社を去っていく。そして、代わりに若い担当者が配属される。「担当者が代わったからといって仕事上で付き合いがなくなるわけではないが、こちらに気を遣われることも多くなり、話も合わなくなっていった」という。それまで、荷主の担当者とは、定期的に会食をしていたが、その機会も減少していった。「うちもバトンタッチしていかなければならないと痛感した」という同社長は、若返った荷主の担当者と同世代の人材を後継者として選任し、対応を任せていった。
     「自分ではまだまだ頑張れると思っていたが、周囲の環境が変わったことで、それが許されなくなった」と振り返る同社長。「同世代で、ずっと一緒にやってきた人たちが定年で会社を去っていくのを見ていると、自分もそういう年になったということを実感する」という。
     さらに、「10年前なら、『よしやろう』と号令をかけて手掛けたことでも、『ちょっと待て』と躊躇してしまう。リスクを考え、保守的になってしまう自分がいることに気付くことも多々ある」という。何十年もこの業界で働いてきただけに、「引退することに寂しさを感じないわけはない」としながらも、「会社の将来を考えると、老害にならぬよう、身を引くことが最善の方法。今はそのタイミングを図っているところ」だという。いつか来る引退の日を前に、一抹の寂しさを抱えながら同社長は第二の人生を模索している。

     
     
     
     

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