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物流ニュース
悩ましさ続く高速協組 どの段階で脱退迫るか
2017年12月28日
車限令の違反者に対し、高速道路料金の大口・多頻度割引を見直す措置が始まって7か月余りが経過した現在、共同利用事業を手掛ける各地の協同組合でリスク排除に向けた具体的な「脱退基準」を明文化する動きが目立ってきた。トレーラを保有しないことで、問題の深刻さが理解できないトラック事業者も少なくないが、複数の協組関係者の話では「違反にともなう警告書通知が夏ごろから増えてきた気がする」との懸念が広がる。話を聞いたなかでは協組にとどまることは認めつつ、累積30点になった時点で高速事業からは脱退を求める内規を設ける例が多かった。なかには早期のリスク回避との判断で同15点とする協組もあるが、仮に脱退が相次げば大口・多頻度割引を利用できなくなる協組が出てくる可能性さえある。
トラックの過積載を計算する方法とは異なり、特車の場合は通行許可証の制限値のわずかなオーバーや、例え許可を得ていても車両に許可証を携帯していない場合は無許可の扱いとなるなど、いずれのケースも想像以上に厳しい違反点数が科される。この点がトラックしか持たない事業者には理解しづらいようだ。1回の違反で20点というような事態も想定されるだけに、違反点数が2年間にわたって累積するようになったことは深刻だ。
累積60点で自社の料金割引が停止するのも大変だが、それ以上に問題なのは所属する協組が期間中に3回の警告書を受け、すべての組合員が連帯責任として割引の停止処分を受けること。その場合、損害分をだれが、どういう形で負担するのかという現実と向き合うことになる。規模の大きな協組の場合だと、わずか1か月の割引停止でも被害額は数千万円以上になるとの試算もあるだけに関係者にとっては切実だ。
こうした現状を踏まえたうえで万一の場合を想定した対策が各地で進んでいるが、その大半はトレーラを保有する組合員を多く抱える協組。なかには「トレーラ事業者だけを抜き出す格好で新しい協組を作り、そこで高速事業を利用するようにしてはどうか」(中国地区のトラック協組)と検討する例も見られるが、設立から1年未満の協組とは契約しないという道路会社側のルールがあるため、仮に実行へ移すとしても一定の時間が必要になってしまう。また、「協組に迷惑を掛けるわけにはいかないし、損害額を負担するのも厳しい」と協組にはメンバーとして残るものの、すでに高速利用の共同事業から脱退した事業者もある。
ただ、実際には「どこかの協組で割引停止が発生するまでは手探りの状態。様子を見るしかない」(西日本を拠点とする異業種協組の幹部)との判断が大方で、「とりあえずは周辺の協組とも情報交換して、累積点数が一定レベルに達した時点で高速事業からは脱退してもらう内規を明確にした」という。ちなみに同協組の場合は「累積30点でコーポレートカードを返却してもらうことに決めた」としており、構成メンバーがトラック事業者だけではない異業種組合の場合は同様に、講習会への呼び出しとなる累積30点を目安とするケースが多かった。
一方、陸運事業者で組織する同業種組合では15点で線を引く例や、実際に組合員が1か月の割引停止を受ける60点まで脱退基準を下げるというところもある。15点といえば1回の運行で科される可能性もあるレベルだが、「これくらい厳しくしておかないと怖いし、組合員の一部には法令違反を前提に基準を緩めること自体がおかしいと指摘する声もあって…」(近畿地方のトラック協組)と話す。似た理由で20点を脱退基準とするトラック協組も目立った。
ただ、「脱退が相次ぐことになれば協組の運営自体が危うくなる」と懸念する関係者も少なくない。60点で高速事業からの脱退を求める方向で進めているという関西方面のトラック協組によれば「そもそもトレーラの高速料金は高く、組合取扱高の面で貢献度は大きい。それが脱退していけば金額が目減りするだけでなく、大口・多頻度割引を受ける条件の1つである月間利用額500万円を維持できなくなる可能性もある」と打ち明ける。
また、累積点数による脱退の内規を設けるのと合わせ、多くの協組が「違反で検挙された場合は速やかに事務局へ連絡するように」と再確認を促す。料金所などに敷設された自動計測装置によって違反が発覚した場合は「道路会社が違反を確認した時点で警告書通知を行う」(ネクスコ西日本)とされており、通知までの時間差によって「軸重違反を自覚せず、知らないうちに累積が60点になっていたというのでは大変」との思いがあるからだ。そうした事情もあって一部の協組では「違反の検挙から3営業日以内に事務局へ報告がなければ罰金を取る」といった厳しい姿勢で臨むところもある。この記事へのコメント
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