リーマン・ショックにより世界的に経済が落ち込む中で、日本国内でも大手だけでなく中小・零細企業の仕事が激減。このため、国は雇用安定助成金を設けて、労働者の雇用継続を図った。物流業界でも同助成制度を利用する会社は多く、約３年間、同制度を利用できることから、中には仕事が半減し、本来は解雇するはずの従業員を継続雇用できるなど、恩恵を受ける事業者も多かったが、同制度を悪用して不正に助成金を得た運送会社もあるようだ。

　ある労働組合の担当者は、「数社から制度を悪用して不正に得た助成金を返金したいとの申し出があり、現在、対応している」と話す。「同助成金に対しては、内部告発で返金を行う事業者も存在し、中には取り締まりの厳しさを耳にして自ら不正に得た助成金の返金を申し出る事業者もある」という。

　また、労務問題などに詳しい人物も「数社から助成金返金の相談を受けているが、不正に得た助成金は総額で１億円を超える。運送事業者の中には同制度を悪用して不正に助成金を得ていたようで、１社で5000万円を超える事例も存在し、今後、同問題は大きくなりそうだ」と話す。（佐藤弘行）