ＡＩＪ投資顧問の問題で運用実態が広く知られるようになった厚生年金基金。トラック厚生年金基金に加入している事業者によると、新規採用についても基金の存在が影を落としているという。

　事業者によると、加入している基金は今回、ＡＩＪによる資金の運用はなかったものの、掛け金と給付のバランスから生じる基金の状態は芳しくなく、「今後、掛け金を上げざるを得ないと思う」と話す。

　そうした状態のなか、この事業者の悩みの一つは新たに採用する従業員のことだ。事業者によると、厚生年金基金に加入する従業員は全員、基金の名簿に名前を載せる必要があり、新たに雇い入れた従業員を基金に入れずに厚生年金止まりの状態に置くことはできない。

　「ただでさえ穴の開いたバケツに水を入れるような状態の基金であるにもかかわらず、新たに雇い入れる者まで同じ扱いにするのは、自らの首を絞めるようなもの」と話す。雇い入れを抑制したりパート・アルバイト扱いにするか、新人の受け皿会社を別に作るといった細工をせざるを得ないという。（西口訓生）