ある日のこと、年金事務所から「お宅の会社は営業されていますか？」と電話がありました。社長が「営業しています」と答えると、年金事務所の担当者は、「営業しているなら社員に給料を支払っているだろうから、社会保険に加入しなければなりません」というのです。

　社長は、これはまずいと思い、「社員はいますが、専門家に相談して返事します」と答えて電話を切りました。

　社長の会社は、以前はよく儲かっていて、社会保険にも入っていました。しかし、バブル経済が崩壊した頃から売り上げが毎年減少し、苦しい資金繰りを強いられています。そこで、社長だけ社会保険に加入したまま、従業員は辞めたことにして社会保険を解約しました。家族経営なのでできたことかもしれませんが、これで資金繰りは楽になりました。社会保険に未加入の従業員は、国民健康保険に加入し、今でも会社に残って働いています。

　聞くところによると、年金事務所が社会保険未加入の会社を調査し、２年前に遡って社会保険料を徴収しているとのことです。社長は、加入すれば資金繰りが苦しくなる、断ることはできないか、と相談しましたが株式会社は社会保険に強制加入となるので断ることはできません。

　逃れることができないなら廃業しようかとも考えましたが、従業員一人を加入させ、他は独立して下請け業者になることとしました。これなら社会保険の調査もまとめられ、支払いも助かる、と言っていました。