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ブログ・小山 雅敬
第272回:2024年問題に続く運送業界の次なる課題とは
2024年5月24日
【質問】2024年4月1日に改正労働基準法と改正改善基準告示が施行されました。2024年問題の次に来る運送業界の課題について教えてください。
「流通業務総合効率化法」と「貨物自動車運送事業法」の改正案が国会で審議された際、衆議院で可決と同時に17項目の附帯決議が採択されました。
法改正は2023年6月2日の「物流革新に向けた政策パッケージ」に掲げられた施策の内容を法制化したもので、それ自体今後の運送業界および荷主に対して大きな影響を及ぼすものですが、実は附帯決議にも今後の運送業界に少なからず影響を与える内容が含まれています。
特に附帯決議中の「早期に時間外労働の上限を一般労働者と同じ年間720時間以内に…」との決議に注目すべきです。「2024年問題」は当面、時間外労働年間960時間の上限規制であり、それすらも「とても無理だ」「長距離便での法令順守は諦めた」など悲観的な意見が聞かれ、一部には「猶予期間の延長もあり得るのでは」など法規制の緩和に期待する声も聞かれました。
しかし、今回の決議により、かなり近い将来に上限が720時間に縮まることが確実な情勢です。2024年問題は序章に過ぎず、本格的な業界再編の嵐は数年後の第二弾の規制であることを改めて認識する必要があります。
今回(2024年4月)の上限規制で深刻な影響を受けているのは、長距離輸送を中心とした地方の事業者が多く、地場配送に特化した首都圏や大都市近郊の事業者では影響はあるものの、死活問題になるほどのダメージではありません。
しかしながら、720時間規制が始まれば、地場配送、長距離輸送ともに極めて深刻な影響を受け、事業の継続をあきらめる事業者が続出することでしょう。
なぜならば、現在、地場配送中心の運送会社でも月間60時間超の残業を行っているドライバーが過半数だからです。ましてや長距離輸送では残業が月間60時間以内のドライバーを見つける方が困難でしょう。
物流システムの大変革以外に解決の道は無いと思われます。まさに2024年問題はゴールではなく、入口に過ぎず、最大の難関は次に迫っているのです。荷主企業でも自社グループ内に実運送会社を抱える動きが出てくるでしょう。
大企業のネームバリューを使わないと若い人を集めることができないからです。中小運送会社が勝ち残るためにはこれからの数年間に何をするべきかを、今一度、真剣に考える必要があります。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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