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    有事の物流を問う 出発せざるを得ない状況に困惑

    2014年4月9日

     
     
     

     2月、関東甲信越を襲った大雪。「コンビニから商品が消えた」「物流寸断」などの報道も相次ぎ、現場ではドライバーが危険を承知で出発せざるを得ない状況が数多く発生していた。今回の大雪では、非常時の対応や後処理について事前の取り決めがなく、トラブルに発展するケースも出ており、災害時の物流のあり方が問われている。荷主と物流事業者、さらに行政も加わり、災害など有事の物流について対応策を考える必要があろう。
     北海道では「年に数回は吹雪で運行中止になることもある」が、「一般消費者を含め、そうした環境に慣れており、受け止め方はおおらか。パニックになることは少ない」という。しかし、関東では珍しく平野部でも1mに迫る積雪となった今回、ほとんどの事業者や荷主が備えのない中での対応を迫られることとなった。


     埼玉県内の事業者は、「センターは容赦なく、〝荷受け時間を過ぎた〟という理由で再納品になった」という。また、別の事業者は、「食品の場合は賞味期限の問題もあり、『とにかく出発してくれ』と言われた。道路状況を説明しても、『戻ってくるな』の指示が出た」という。
     結果的に、「碓氷峠で3日間」「国道18号で足止め」など、立ち往生するトラックが続出したが、一方で荷主側が運行中止の判断を行ったケースもあった。埼玉県川越市で食品配送を手掛ける事業者は、「荷主の方から今日は来るなと指示があった」とし、衣料品を扱う同川口市の事業者も「店舗への配送では、今日は無理しなくていいと言ってもらえた」と話している。また、同春日部市の事業者は「積み込みをしているとストップがかかった」という。
     ただ、この事業者によると、「配送にストップが掛けられたのは荷主直営のセンターだったから」としており、「直営でないセンターは運営しているのも別の物流事業者であり、自社で判断できる立場になく、荷主の指示がなければ道路事情がどうであれ『行ってくれ』と言うしかない。実際にそんな現場がいくつもあった」と指摘する。
     物流の外部委託化で生まれた荷主、センター運営会社、運送事業者の三層構造が緊急時の対応を困難なものにしてしまったといえる。しかし、荷主直営のセンターでも判断が下せないケースもあった。「道路事情が分かっていながら運行を指示された」という埼玉県の事業者は「荷主の担当者は組織人。後から責任を追及されるのを恐れて『いつも通り行ってくれ』としか言えない」と、保身を優先する担当者の姿勢に不信感を募らせる。
     さらに、今回問題となったのは当日の指揮管理系統だけではない。「雪の影響で遅れた集荷や配送にかかった費用は全てウチが持った」というのは埼玉県川口市の事業者。また別の事業者は、「契約書上、天災の場合は免責のはずだが折半がいいところで、下手をすると、こっちが負担増となる」とし、「振替輸送分の運賃が出る・出ないで揉めた」という事例もあった。
     一方、関東一円の店舗へアパレル商材を供給する荷主は、「店舗(着荷主)側の理解もあり、運行本数を減らしたり、翌日に振り替えるなどの対応をした」と話している。また、全国に物流拠点を置くメーカー担当者は、「影響は少なかったものの、再配送などの経費はかかった」と話す。同社では、災害時などのBCPを策定し、「生産を止めないことが第一。物流に関しては一つのセンターがマヒしても別の拠点がその分をカバーできる体制を構築している」と説明するが、個々のセンターについては現場対応に委ねる部分が大きいという。運送事業者への対応までは明文化されておらず、現場の状況が上層部まで届かず見過ごされている現状がうかがい知れる。
     雪の影響でドライバーが物損事故を起こした事業者は、「社内では今回の事態を重く受け止め、今後は荷主に状況を伝えていこう、という話になった」と自衛に動き出した。状況を共有し、荷主の的確な判断を仰ごうとする試みだ。
     首都圏では近い将来、直下型の大地震が発生すると専門家は予測している。今回、大雪という災害で露呈した物流の弱点を、どう補うか。物流事業者だけではなく、荷主企業、そして行政も加わり、災害などの有事の対応策について取り組んでいく必要があろう

     
     
     
     

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