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物流ニュース
JA全農とちぎ 「県域物流」で物流コスト削減に成功
2020年3月16日
相互扶助の精神のもと、農家の営農と生活を守り高めて、よりよい社会を築くことを目的に組織されたJA(農業協同組合)は、あくまで組合員の生活を守り向上させることが目的で、利潤の追求を目的とはしていない。だが、農家の減少にともなう組合員数の減少はJAの財務面にも影響を与えている。そこで、全国各地で組合員の生活を守り向上させるために、物流改善に取り組むJAが増えている。JAグループ栃木では平成12年から物流改善に取り組んでおり、平成13年度から「県域物流」という仕組みをスタート。「県域物流」の導入で、生産資材に関わる物流コストの削減を図っている。
「県域物流」は、全国農業協同組合連合会栃木県本部(JA全農とちぎ、池田佳正県本部長、栃木県宇都宮市)が元請け機能を務め、それまでJA担当職員が行っていた農業生産資材の戸配送業務を運送会社に外部委託するという制度のことをいう。
この制度により、JAの物流業務に関わる人員・設備を削減して、生産資材価格の引き下げや、余剰人員を営農支援など組合員とのコミュニケーション強化に充てることを目指した。現在、県内10JA中7JAが県域物流を導入し、県内カバー率は約83%を占めている。
8つの配送センターを県域物流拠点として設置し、運送会社5社によって運営。物流コストの削減額は、県域物流の導入前後の比較で、全体でおよそ4億9000万円を達成した(物流コスト比率は10.8%→9.0%)。
平成15年には、県域物流とリンクした総合的な物流改革の構築を目的として、「県域物流将来構想」を策定。翌16年11月に仕入れ機能の強化策として「総合物流センター」を設置し、農薬在庫の集約による在庫コストの削減、集中配送による配送コストの削減、県域物流導入JAにおける農薬の組合員別セット組による配送の効率化などを実現させた。
JA全農とちぎの管理部物流対策課の加藤大課長(写真右)は「平成12年頃、JAグループの物流を含めた事業の経営が厳しく、物流コストの削減にも取り組んでいこうという流れが決まってきた」とし、「10JAがそれぞれ自前で行っていた配送を、単独ではやらず、全農に業務を委託して、トータルでコストを削減していこうとなった」という。
「スタートの時点では、組合員にできるだけ安く資材を提供することを目的に、物流コスト削減に取り組み始めた」とし、「過剰サービスであった部分をルールに基づいてやることで、無駄なコストを省くことができた」としている。
総合物流センターの大塚守センター長(同左)は、「当センターは農薬の保管倉庫であり、ここから7JA管内にある8つの配送センターに配送を行う。その配送センターからそれぞれ地域の組合員に個配していく」とし、「配送センターはそれぞれの地域で付き合いのある運送会社5社に業務を委託し、JAから配送センターの運営も任されている」と話す。
加藤課長は、「物流は、コストがどこにかかっているか見えづらいので、改善する余地がある。手をつけづらいのも事実だが、詳細に検討してやり方を変えれば、十分に削減できると考えている」として、「年々農家の規模が大きくなっている。時代に合わせて、これまでと違う仕組みも常に考えていく必要がある」という。
◎関連リンク→ JA全農とちぎ
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